岩手県奥州市からのExpedition Seavice(移動運用)を終えて、
仙台に戻る帰路の途、登米市東和町米川辺りを走行している時だった。
日中の昼間の時間帯も長く丁度、17:00を回ろうとした時である。
「まだ、仙台に戻るまで時間がある。せっかくだから、
例のあそこの場所に行ってみよう。」と云う事で、急遽進路を変更した。
国道346号線沿いのコンビニエンス・ストア(セブンイレブン)のT字路交差点を右折し、
北上川沿いを北上する事に…。
およそ10分程で小生が以前から目をつけていた目的地に辿り着いた。
テレビの中継施設好きの小生にとっては、
アナログ放送時代から目をつけていた秘密の場所である。
今回訪れたのは、嵯峨立南(さがたちみなみ)デジタルテレビ中継局である。
(嵯峨立南デジタルテレビ中継局の全景。)
実はこの中継局、デジタル中継局が設置されるまでは、
そう簡単には行かなかったのである。
ちなみに同中継局は、昭和52(1977)年 3月 2日に開局。
設置当時は、NHKの総合(G)と教育(E)の単独局として設置された。
丁度、この時期はアナログ放送の難視聴対策として、
全国各地にUHFの中継局が次々と誕生した時期でもあり、
同中継局もその一貫である。
しかし昭和51(1976)年辺りから、全国的にこれより小さい僻地救済の為の
共同受信施設の設置が主流となり始めた。
この頃からUHF・0.1Wクラスのローコストタイプのミニサテライト局の設置がタケノコの様に
増え始め、既存の中継局の設置が後回しになる様になった。
現にこの中継局の北部に “東和嵯峨立(とうわさがたち)”中継局(垂直偏波) が
あり、こちらはパンザマストを鉄塔替わりにしたミニサテライト局が同中継局より
後発で誕生したものの、こちらはNHKと在仙の民放4局が全て受信出来ると云う、
皮肉な現象が起こった。しかし、チャンネルを設置するにしてもこの頃から、
UHFのアナログチャンネル自体も飽和状態となり、同地に適したチャンネルプランが
割り当てられない事情もあった様である。
(至近距離からのアップ画像。因みに上段のパラボラアンテナ
は、2.4m口径。下段のグリッド式のアンテナは、
30型オフセット用のグリッドアンテナ垂直偏波用。
上段部、下段部とも涌谷中継局<加護坊山>の電波を受信。)
ミニサテライト局の設置が一段落着いた昭和60(1985)年頃、
再び既存のアナログ中継局の放送格差是正と、
難視聴解消事業計画が始まったものの、
遂に同中継局への民放局の設置の陽の目を見る事はなかった。( p_q)
そんな最中、1990年台辺りからテレビのデジタル化の話が遡上し始める。
従来のアナログテレビとは比較にならない鮮明な画像とデータ放送が見られる
といった言葉がこの辺りから登場する様になった。
(鉄塔と局舎を結ぶ同軸給電部。)
中継局のデジタル化に当たっては、まず基本的に発信送信元(送信所)の “基幹局” 。
基本的に中継施設設置が必要な “大規模局” 。
地域間の通信上、必要不可欠とされる、 “重要局” 。
地域ごとに必要な “小規模局” の4種類に分類された。
ちなみに同中継局は小規模局に分類されている。
電波審議会では、同中継局は設置対象の候補リストに上がったが、
それも条件つきでの設置と答申された。
それは、この地域は宮城県北部を最大カバーエリアとしている、
涌谷(わくや)中継局<垂直偏波/出力 100W>があり、
「先行開局(涌谷)のカバー状況をみて、設置可否の判断」と答申されたのだ。
つまり先行局の電波がカバー不可能な場合は、設置の検討。
全エリアカバー可能な場合は、設置は不要。と云う事になる。
つまりボーダーライン上と云う事になった。
これは、アナログ中継局設置の際、次々と中継局の数が増え過ぎて割り当ての
チャンネルプランが不足した事による反省と、
中継局ひとつにとっても莫大な建設費と保守点検に掛かるコストを最小限に抑える
為の策とも云われいる。
因みに同中継局への整備計画年次度では、平成21(2009)年頃となった。
(この中継局の鉄塔は自立式三角鉄塔で、
別名“iD鉄塔”と云う。因みにiDとは、この鉄塔を
施行しているNHK関連の子会社、 “NHKアイテック”
で、業界内では、“アイテック・デジタル”と呼んでいる。)
平成18(2008)年に涌谷中継局の設置から始まり、年次計画を以って
次々とアナログ中継局に対するデジタル化の改修工事が始まった。
その間、先行で開局した涌谷中継局の電波が同エリア内に届くかどうか、
調査が始められた。サービスエリアもおおよそ100世帯位で、
設置不要の際には、一時、民間の共同聴視施設(共聴)も検討されていた様である。
年次計画内でも計画が実施されず、“設置不要”が持ちあがった。
(局舎に貼られている、設置局概要プレート板。
因みに同中継局は、国の国庫補助を得て建設。
デジタルになってから、民放局が設置された。)
しかし、同中継局のサービスエリア内の地形は左右を山に囲まれた上、
北上川沿いに向かって拓けている地域で、涌谷中継局を受信出来る環境はあるものの、
良好で鮮明な画質が届いているとは言えない状況でもあった。
しかも、アナログ放送に対するデジタル化の出力算出対比(1/10)では、
同地域エリア内に於ける全カバーは不可能だった様である。
その為、逆に出力を増力して全エリアをカバーするしか方法がなかったのである。
しかし中継局一局を設置するにしても莫大な費用が必要になる。
当然、負担額も尋常ではないのだ。折しも当時は『平成23(2011)年 7月24日を以って
アナログ放送終了』と盛んに叫ばれていた時である。
全くの『待ったなし』の状況でもあった。
その為、総務省はデジタル化を円滑に進める為に、
国の国庫補助事業(無線システム普及支援事業)としての整備を進める事になった。
国が全費用の2/3を負担し、残りの1/3を自治体と放送局が負担すると云う形を取った。
(中継局局舎を横にしている、
blog管理人筆者。(^_^;))
アナログ放送時には、NHK2波(G、E)のみの単独局だったが、
デジタル化に於いては、地域間放送格差を是正する観点から、
既存のNHKはデジタルへの改修、
民放4局(東北放送、仙台放送、ミヤギテレビ、東日本放送)はデジタル新局として、
同中継局の設置計画を正式に決めた。
尚、アナログ中継局の方は現時点(平成25年6月2日)では写真の通り、
まだ撤去されて折らず、そのままの状態になっている。
(こちらは、平成24(2012)年 3月31日を以って終了した、
旧アナログテレビ中継局の送受信アンテナと鉄塔。
アナログ時代は、民放局の設置はなくNHKのみの単独中継局で、
受信親局は、仙台だった。)
【旧アナログ中継局時代の 一覧データ】
【送信チャンネル】 51ch(総合)、49ch(教育)
【受信チャンネル】 03ch(総合)、05ch(教育)
【受信親局】 仙台(大年寺山)
【出力】 0.5W
【送信アンテナ】 双ループ(6L1段1面、4L1段1面)
【受信アンテナ】 八木型(8素子1段2面/総合)
八木型(8素子1段1面/教育)
【送信鉄塔】 11mH 簡易式TM型
【デジタル中継局 一覧データ】
【局所名】 嵯峨立南(さがたちみなみ)
【局所コード】#600087
【設置所在地】宮城県登米市大字東和町錦織字大木沢
【受信親局】涌谷中継局(垂直偏波)
【局所規模】小規模局
【予備免許】平成22(2010)年 6月22日
【本免許】平成22(2010)年 9月22日
【運用開始日】平成22(2010)年 9月27日
【施設概要】双ループ(6L1段1面) <送信アンテナ/最上段>
2.4m口径 鏡面パラボラ<受信アンテナ/上段>
30型 オフセット・グリッドパラボラ(垂直型)<受信アンテナ/下段>
【送信鉄塔】自立式三角鉄塔(iD鉄塔)
【設置放送局】NHK-G<仙台>、NHK-E<仙台>、TBC・東北放送、
OX・仙台放送、MMT・ミヤギテレビ、KHB・東日本放送。
【出力】0.1W
※…アナログ放送時の中継局の出力は0.5W。
デジタル放送は、アナログ放送と比較して、
およそ1/10の出力で賄える事が出来る。
実際の計算上では0.05Wで充分だが、
同地点のサービスエリア内に於いては地形上、
この出力ではサービスエリア内の全世帯へのカバーは出来ず、
従って出力の増力が施された。(アナログ放送に逆換算すると出力は1W。)
【局舎概要】組立式局舎
(赤十字印は、嵯峨立南デジタルテレビ中継局の
所在地になります。)
※…下記のURLをクリックすると、サービスエリア及び、
送信チャンネルの一覧項目をご覧になれます。
http://www.soumu.go.jp/soutsu/tohoku/hodo/h2204-06/images/0622c1013.pdf
JG7MER / Ackee