チロリン。
メールの着信音。
ヌナは携帯を確認し顔色を変える。
あの人からのメールだ。
ヌナは…僕の好きな人は不毛な恋をしている。
相手は既婚者。
でも、初めから既婚者だったわけではないらしい。
相手は以前勤めていた会社の先輩。
ヌナは先輩のことが大好きで、そばにいたかった。
先輩にとっては遊びだったとしても、構わなかった。
そばにいればいつか振り向いてくれるんじゃないかと、淡い期待を抱いていたと。
そう、ヌナは話してた。
しかし、先輩はヌナとの関係を続けたまま、別の相手と結婚した。
その事実は友達から聞いて知ったらしい。
それでも、自分からは離れることができなかったと。
俺とヌナが出会ったのはそんな頃だった。
俺たちはすぐに仲良くなった。
いろんなところに遊びに行った。
楽しそうなヌナの笑顔が俺は大好きだった。
なのに、時々携帯を見つめて悲しい顔をする。
その理由が知りたくて質問した。
ヌナは恥ずかしそうに、情けなさそうに不毛な恋の話をしてくれた。
「そんな恋はやめるべきだ。」
「そうだよね…。」
俺の言葉に、ヌナは悲しそうに笑顔を浮かべてた。
その時のヌナの顔が今でも俺の胸から消えない。
でも、それからヌナが悲しい顔をすることがなくなった。
だから俺はてっきり終わったんだと…
携帯を確認したヌナは立ち上がった。
「行かなきゃ…」
俺はとっさにヌナの手を掴んだ。
「行くな!」
「ジョンウン!?」
「メール、あの人でしょ?行っちゃダメだ。ヌナが不幸になるだけだ。」
「そうかもしれないけど、でも…」
「もう忘れて!俺のこと見て!俺のことだけ見て!」
「え!?」
「俺は…俺は、ヌナのことが好きだ!俺がヌナを幸せにするから、俺のそばにいて!忘れさせるから!」
ヌナはポロポロと涙を流し始めた。
俺はヌナの背中をさすりながら、椅子に座らせた。
ヌナは少しずつ話し始めた。
俺に言われてからは、自分に言い聞かせ、会わないようにしたと。
もともと、ヌナが会いたいと言って会っていた関係だったから、連絡しなければ会うことはないし、俺と過ごす時間が楽しくて、考えないでいられたと。
なのに、今回、久しぶりに先輩から連絡があり、以前の気持ちが蘇ってしまったと。
会いたい。
でも、会ってはいけない。
でも、会いたい。…と。
俺はヌナを抱きしめた。
「俺が忘れさせるから…」
「ダメだよ…私は弱い人間だからジョンウンを傷つける。」
ヌナは俺から離れようとした。
「俺は大丈夫だから。」
俺はヌナを抱きしめる腕に力を込めた。
ヌナは俺の腕の中で震えながら涙を流した。
絶対に行かせはしない。
俺がヌナを幸せにする。
俺は心の中で強く誓った。