小説家の故・井上ひさしさんに、こんな名言があります。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そしてゆかいなことはあくまでゆかいに
簡単に言えば、自分にしか書けないことを、誰にでも分かる文章で書くことです。
読み手の心に響く文章力や伝え方を身につけるには、日頃からの努力と訓練が必要です。
良い文章を書くには、言葉に対する注意力が求められ、そのためには、色んな本を読んで語彙を増やしたり、書き方の技法を盗んだりすることが大切になります。
例えば私は、2012年から10年以上にわたり、朝日新聞の「天声人語」というコラムを毎日書き写しています。
天声人語は、朝日新聞を代表する論説委員が執筆していますから、まさに文章のお手本です。
テーマは様々ですから、時事ネタや雑学的な知識も増えます。
自分で言うのもなんですが、かなり力はついていると実感します。
井上ひさしさんの言葉に戻れば、「むずかしいことをやさしく」で始まっていることからすると、相手に何かを説明したり教えたりするためには、中途半端な知ったかぶりなどできるはずがなく、むしろ自分自身がそれについて精通していなければなりません。
難しい言葉をただ並べたり、上辺をなぞったりするだけでは意味がありません。
SNSなどが発達している昨今、自分で文章を書くという機会はめっきり減ってきたのではないでしょうか。
言葉は、意思伝達の強力な手段です。
しかし、一定の目的を果たすためには、言葉を注意深く選ばなければなりません。
ある時には適切な語でも、状況が変われば不適切なものになることがあります。
言葉によっては二重の意味があり、攻撃的な、あるいは人を見下げる含みを持つものもあります。
私たちは、口頭で説明するときであれ文書を作成する時であれ、常に「分かりやすさ」を意識すべきです。
特に、相手に是非伝えたいことは、長々と複雑な言葉を並べるのではなく、短い文と簡単な言い回しが有効です。
その方が記憶に残るからです。
これは仕事上や学校で、何かを発表する時にも役立ちます。
先程触れた「語彙を増やす」という点では、どの場面でも同じ表現を用いるのではなく、種々様々な語を取り入れます。
どうすれば語彙を増やせるでしょうか。
何かを読んでいて分からない言葉があったら、国語辞典などで調べ、適切な時に用いることができるようストックしておくことができます。
語彙が増えれば、話し方や文章が精彩に富み、生き生きとした印象を与えることができます。
同時に、その言葉の意味、読み方、どんな時に使うかを理解しておくなら、より一層精錬されたものになります。
「言葉を友人に持とう」と言ったのは寺山修司さんでした。
「言葉の肩をたたくことはできないし、言葉と握手することもできない。だが、言葉にも言いようのない、旧友のなつかしさがあるものである」と。
私もかれこれ10年以上アメブロを続けていますが、自分の考えを整理するのに役立っています。
良い言葉を、うまく伝える。
文筆に卒業はありません。