なにをしたかは覚えていない

だけど、母親が「今日、お父さんが帰ってきたら怒ってもらうから」

その言葉は、恐怖の何物でもなかった

そして、父親の帰宅

私は、有無を言わさず、押し入れ、暗い庭、屋外の物置に閉じ込められた

暗い、何も見えない恐怖の場所にどの程度放置されたかは覚えていないが、子供心に、すごく長いものに感じた

それから、親は怖いもの、逆らってはいけないもの、絶対的な存在だと思うようになった

 

私は今まで、両親が心から笑っている姿を見たことがない

もっとも、現在、父親は生きているか死んでいるかわからない

誰だって歯医者は嫌いだと思う

キーーーーーーーーーーーーーーィン

ガーーーーーーーーーーーー

クィーーーーーーーーーーーーーーン

待合室で待っているだけで、緊張

次は自分の番・・・・次は自分の番・・・・

 

そして、いよいよ私の順番が回ってきたが、私は逃げるわけには行かない

治療台に座ると、つい

「痛くないようになってください」って歯医者さんにお願いした

 

そうしたら、母親に「あんた、前はいい子だったでしょ!」って怒られた

 

歯医者で、痛いふりをしたり、医者にそれを訴えちゃいけないんだ・・・・って理解した

 

まだ、このころは、親が言うことは絶対で、それに意見すること、逆らうことなんて、いけないことだった

ちいさかった頃の記憶というのはほとんど残っていない

その数少ない中の一つがこれです

 

私が4,5歳のころ 
ちっちゃい子は、昼寝をするもんだと思い込んでいた母親 
2時から3時までは昼寝の時間と決められていた 
しかし、私だって生物の一つで、無理に寝なさいと言われて寝れるようなものではない

毎日毎日そんなに決まった時間に眠くなるのは不可能
寝ていないと、「どうして、寝ないの!」と怒られたから、怒られるのが嫌だったので、結局、ほとんどタヌキ寝入りしながら、布団の中に潜っていた

ときどき、ちゃんと寝ているかどうか、監視に来たりして、それで、目をつぶっていても、目玉が動けば、「あんた、寝てないでしょ」と怒られた

だから、監視が来た時には、目玉が動かないようにも注意したりしていた

もちろん、寝返りなど打ったら、起きているとばれてしまう

そのころの私にとっては、昼寝の時間は、休息の時間ではなく、苦痛の時間でしかなかった


そんなとき、布団に潜っていたら、目を開けても寝ていないことがばれない

ちょっと目を開けた瞬間、布団の隙間から、たまたま遊びに来ていた叔母と目が合っってしまった

私は瞬間「やばい」と思った・・・・それは、はっきり、今でも覚えている

しかし、叔母は黙っていてくれた 
だって、もし、そこでタヌキ寝入りがばれたら・・・・・私は「なんであんたは、ちゃんと決まった時間に寝れないの!」って怒られるの知ってたから