街から少し離れた場所

そこに、彼女の言う灯台があった。


灯台は今は使われておらず、その場所自体

ただの公園でありきたりなベンチが3つほど

あり、よくあるデートスポットなどとも言われていた。

 

「ここ、あんまり人がいなくて・・・・私とあの人だけの

2人の場所って言ってもおかしくなかったんです」

 

「・・・・・」

 

「普通の恋人でした。でも、何かが切れる様に

関係が薄れていって。」

 

そんな昔の話をしているとき

草むらから何か動くような音がした。

風ならまだわかる。

でも、風は吹いていなかった。

 

「・・・・フッ、あなたの影が来ましたよ」

 

「え?」

 

草むらから出てきたのは、人の形をした影

女性の形の影だった。

 

と、出てきたとたんに影は女性に

襲い掛かり覆いかぶさった。

 

「きゃぁっ!?」

 

「あなたの影がなくなった理由・・・考えたことはありますか?」

 

「え?」

 

「影は生まれてからずっと一緒にいるいわば一生のパートナー。

あなたは恋人を失い、こう思ったはず『死のう』と」

 

「・・・・!」

 

雨月は淡々と話を進める。

 まるで、女性の全てを見透かしているかのように。 

 

「影がないということは、『死んでいる』ということですよ。

影はちゃんとあなたの願いを叶えた。

でも、まさか肉体が動き、魂が残るということまで想定

しなかったんでしょうね・・・」

 

「じゃ、じゃぁ・・・」

 

「そう、今、あなたは殺されるところなんですよ『自分』に」

 

影は自分が消えることで主は死ぬ。

とそう思っていた。

事実、影がなければ死んだことにはなる。

でも、想定外

死ぬと思っていたものが動き言葉を喋っていた。

そして、『死』を願っておきながら、

その願いを裏切った。

 


「・・・・・・・・」

 

「あなたの願いなんでしょう?」

 

「い、今は・・・」 

 

「違うんですか? ずいぶん、勝手ですね」

 

「あんなの一瞬の・・・」

 

「一瞬だろうとなかろうと、そんなのは叶える側には関係ないんですよ。

あなたは契約を裏切った。影が願いを叶えたというのに

その寸前、あなたは『生きる』か『死ぬ』かで迷ってしまった」

 

だからこそ、影はちゃんと願いを叶える事ができなかった。

 

「さてと、ちゃんと2人でわかりあってください」

 

そう言って、雨月は影に腕を突き刺した。

もちろん、実体じゃないのだけれど、

なぜか雨月が触れると実体のように

一瞬、痛みを感じるようによろめいたのだ。

 

「な、何をしてるんですか・・・!?」

 

「影に言葉を上げたんですよ。何も、毎日毎日、主の真似事しか

しないと思ったら大間違いですよ。

影は主と逆さを向いているんです。だったら、主とは逆の

想いもあるはずですよ」

 

「・・・・」

 

ズブッ。

影から腕を抜いた。

 

すると、影は少しうめくような声を上げた。

 

「あ・・・うぅ・・ぁ・・・・」

 

「・・・・」

 

「眼をそらせば、今度こそ死にますよ。

ちゃんと、向き合ってください。」

 

「ひ、久・・・ぶり」

 

「ひ・・・・・さ・・・し・・・・ぶり・・・」

 



カランカラン♪

 

また雨月の店に

客が来た。

 

昼間と同じ女性だ。

 


「いらっしゃい。ちゃんと、来てくれましたね」


「来ないといけないと思ったので・・・・。でも、どうして夜なんですか?」

 

「”夜だからこそ”ですよ」

 

「????」

 

「影は、主の分身でもあるんですよ。生まれてから死ぬまで一緒。

と言うことは、あなたが一番関わりの深い場所に現れる

可能性が高いんですよ」

 

確かに、影は生まれたときから脚についている。

それは死ぬまで一緒である意味

恋人みたいなものだ。

生まれてから一緒なら

どこに行くか。それくらい簡単にわかるはずだ。

 

そう雨月は考えていた。

 

「関わりの深い場所・・・・」

 

「どこか覚えは?」

 

「・・・・・」

 

「言わなきゃ、先に進まないんですよ」

 

「昔、恋人がいたんですけど・・・その人と別れて

なぜか気づいたらその人と一緒に来ていた灯台に

いて・・・それで意識をうしなって」

 

「眼が覚めたら足元にあるはずの影がない・・・・と」

 

「はぃ。それで日の光を避けてたんです」

 

影が無いということは、

その人の存在は消えてしまう。

だからこそ、日の光を浴びるわけにいかなかった。

いや、浴びてはいけなかったのだ。

 

「では行きましょう。その灯台に」

恋愛って、よくわからないですよね。

 

『信じて』と言われたから信じたとしても

それが本当にその人の気持ちなのか。

 

それとも嘘なのか。


嘘だとしたら、辛いよね。

辛い。

 


あの人に自分が一体どういう風に見られてるんだろ。

って思う。

 

でも、それを聞いたところで

その人が言った言葉は嘘かもしれない。

 

 

わからない。




結局のところ、あのとき、病気であえなくなるってのを

教えたとき、あの人どんな気持ちだったんだろ。

その返信には泣けるようなこと書いてあったけど・・・・

でも実際は・・・。

 

 

はぁ・・・・

人を信じるってわかんないね