1月26日朝電話が鳴った
「小蘭起きて!病院に行くよ!」
震える手でタクシーを呼んだ。
雪道を転がる様にタクシーに乗った。病院まで五分もかから無いのに長い距離に感じた。

ついに来たんだ

輝男の病室に入ると、看護師が輝男の傍に座っていた。輝男の顔はまだ白い布で覆われてはいなかった。
「輝男さん!御免ね、、間に合わなくて御免ね」となん度も繰り返した。

医者からは、「簡易ベッドに寝ても良いですよ、蘭ちゃんと2人でどうぞ」たびたび勧められたが、輝男さんに聞くと
「私は大丈夫です。お姉さん、蘭ちゃんの学校が有るから家で休んでください」と、何時も断られた。
昨夜も訪ねたが、彼の答えは同じだった。

蘭ちゃんはマスクをした顔でジッと輝男をみて、「アーんアーん」と、初めて声をあげて泣いた。
(妹の秀子さんが闘病中、三歳にもなら無い蘭ちゃんはこえを出さずに寝る時に涙を流したと、蘭ちゃんを預かっていた久子が言っていたが、12歳になる今も気丈に振る舞っていたが…)
蘭ちゃんを抱いて一緒に泣いた。大粒の涙がこぼれた。顔を覆いもせずにないていた。

生前お世話になった友人が、お祈りに来て下さった。旅立った直ぐのお祈りです。

暫くすると、看護師さんが清拭を始めました。私と一緒に蘭ちゃんも手伝いました。

大きくなったおなかを拭き、男性のシンボルはわたしが拭きました。本来妹以外が触れてはいけ無いものですが、妹の代わりと思ったのです。
蘭ちゃんは輝男さんの腕を拭きながら、
輝男さんがいつも身に着けていた水晶のブレスレットを外して自分の腕にはめた。

其れがとても自然な仕草で小学生のものとは思え無い様だった。

輝男さんの遺体と一緒に一晩過ごし
翌朝蘭ちゃんは
「パパの夢を見たー」と言いながら起きて来た。「え、かおをみたの?」と聞くと
「ん〜ん.でもパパだった👨」と、強く
肯定した。

炬燵に座る蘭ちゃんの胸に何かペンダントの様なものが光った。指輪の様でした。「其れは何なの?」と、聞くと「パパがね
「「自分が死んだらコレを首に掛けてね」と、言ったんだ」
其れは、ペンダント用の鎖に妹秀子さんと輝男さんの結婚指輪二つを通したものでした。妹が亡くなって10年間輝男さんは妹の結婚指輪を大切に保管して置いたのでした。其れを蘭ちゃんに保管して欲しかったのでしょうか。

涙が出そうになって…


輝男さんの渾身の愛を込めたメッセージでした。

娘に「貴女はわたしたちの愛の証だ」と言っている様でした。

輝男さんは生前「◯蘭が居なければ、自分の人生は何もありません」と、私になん度も繰り返していました。

皆様何時も訪ねて下さり、
有難う御座います。こんな小説の様な話が本当にあるのです。
こんな子が、こんな家庭があるのです。

感謝して生きていきましょう。
たった一度の人生なのですから…おねがい


美しい紅葉です。
しぜんは心を癒してくれます。