徳行品第一 #11 「内証身」 | 仏教のこころ

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●無量義経徳行品第一 #11

 第二 別序 「内証身」


●概要

ここには、如来の存在が空であり、仮であり、中であることが示されている。簡略にいえば、無執着の境地だということである。


●現代語訳

 その身体は
 有ではなく 無ではなく
 因ではなく 縁ではなく 
 自他ではなく
 四角ではなく 円ではなく 
 短くも 長くもなく
 出ではなく 没ではなく
 生じるのでも 滅するのでもない
 造られたのではなく
 起こったのではなく
 為すのでもなく 作るのでもない
 坐っているのではなく
 寝ているのではなく
 行くのでも とどまるのでもない
 動くのではなく 転がるのではなく
 動きが止まっているのではなく
 進むのではなく 退くのではなく
 安全でも 危険でもない
 肯定ではなく 否定ではなく
 得でも 損でもない
 あちら側はなく こちら側はなく
 去るのではなく 来るのでもなく
 青ではなく 黄ではなく
 赤でもなく 白でもなく
 紅ではなく 紫やその他の色でもない


●訓読

 その身は 有に非ず また無に非ず 
 因に非ず 縁に非ず 自他に非ず 
 方に非ず 円に非ず 短長に非ず 
 出に非ず 没に非ず 生滅に非ず 
 造に非ず 起に非ず 為作に非ず 
 坐に非ず 臥に非ず 行住に非ず 
 動に非ず 転に非ず 閑静に非ず 
 進に非ず 退に非ず 安危に非ず 
 是に非ず 非に非ず 得失に非ず 
 彼に非ず 此に非ず 去来に非ず 
 青に非ず 黄に非ず 赤白に非ず 
 紅に非ず 紫種種の色に非ず



●真読

 其身非有亦非無(ごしんひうやくひむ)
 非因非縁非自他(ひいんひえんひじた)
 非方非円非短長(ひほうひえんひたんぢょう)
 非出非沒非生滅(ひしゅつひもつひしょうめつ)
 非造非起非為作(ひぞうひきひいさ)
 非坐非臥非行住(ひざひがひぎょうぢゅう)
 非動非転非閑静(ひどうひてんひげんじょう)
 非進非退非安危(ひしんひたいひあんき)
 非是非非非得失(ひぜひひひとくしつ)
 非彼非此非去来(ひひひしひこらい)
 非青非黄非赤白(ひしょうひおうひしゃくびゃく)
 非紅非紫種種色(ひくひししゅじゅしき)



●解説

ここでは、有無の両辺への固定した観方を否定している。人は「有る」と観ればそれに執着し、「無い」と観ればそれに執着する。霊魂の有無、死後の世界の有無、輪廻転生の有無、解脱・涅槃の有無に執着し、時には執着することによって他と争うこともある。仏教では、何らかの事物に執着することを否定する。

事物の有無は因縁に依る。因縁和合に依って仮に有り、因縁和合が無ければ仮に無いのだから、有無という固定した観方からは離れる。

最初の「非有亦非無」が理解できれば、その後の「非因非縁非自他~」も理解できるだろう。ただし、納得できるまでには時間がかかるかも知れない。ある程度、仏教を理解できるようになってから、じっくりと観じたほうがいい。


~無量義経徳行品第一 #11