歴史的出来事の紹介:「バチカン市国が成立」
1929年6月7日、イタリアのローマにある小さな区域が、国として正式に独立した──それがバチカン市国じゃ。
この日は「ラテラノ条約」という合意が結ばれた日で、イタリア王国(当時)とカトリック教会のローマ教皇庁が、長年の政治的対立を終わらせるために調印したんじゃよ。
中世以来、ローマ教皇は「教皇領」と呼ばれる広大な土地を持っとったが、1870年のイタリア統一運動でこれを奪われてしまい、教皇は“バチカンの囚人”と言われるようになったんじゃ。
ところがこの日、わずか0.44平方キロの土地が、正式に「国家」として独立。しかも国民はたった800人ほど。通貨も郵便局も鉄道もあるが、世界で一番小さな国じゃ。
🔗 詳しい解説:バチカン市国 - Wikipedia
🎉 ショートストーリー:「ローマのど真ん中で、国がぽん!」
──語り手:ノブおじいちゃん(陽気で温かい口調)
ふぉっふぉっふぉっ……さてさて、こりゃあワシが若い頃、旅先のローマで聞いた不思議な話じゃ。
その日、ワシは観光客としてローマをぶらついておった。コロッセオに感動して、トレビの泉に小銭を投げて──さて、あとはサン・ピエトロ大聖堂でも見に行こうかと思ったその時じゃ。
目の前を歩いとった小学生くらいの少年が、お母さんにこう言うとったんじゃ。
「ねぇママ、ここってローマじゃないの?国なの?」
すると母親はさらりと、「違うのよ、ここは“バチカン市国”。外国なの」とな。
ワシ、思わず立ち止まってしまったよ。「……え?いま何て?外国?」
なんじゃなんじゃと近くのイタリア人ガイドさんに話を聞くと、こう説明してくれたんじゃよ。
「サインオーレ、ここから先は“バチカン”です。面積は東京ドーム10個分もないくらい。でも、ちゃんとパスポートもある“国”なんですよ」
ほれ、びっくりするじゃろ?街中を歩いていたら、いつの間にか国をまたいでた、っちゅう話じゃ。しかもな、中には独自の鉄道があるんじゃが、それがたった1駅しかない。片道運行で、乗る人もほとんどおらんとか。
「国境越え、わしもやったんじゃ!」と得意げになったワシじゃが、国境を越えるのにパスポートいらず、歩いて5分──まるでアトラクションのような国なんじゃよ、ここは。
さらに言うと、ここの元首(国家のトップ)は、なんとローマ教皇様じゃ。つまり、信仰の頂点に立つ人が国家元首でもある、ちょっと特別すぎる国なんじゃな。
おまけに、バチカンには「国民」がいないようで、住んでいるのはみな“職務”についている人──つまり神父さんや警備のスイス衛兵さんたちばかり。
こうして、宗教と政治が一体となってできた“世界最小の国家”は、なんと、世界中のカトリック信者の中心地にもなっとる。
そうじゃな、まるで「天と地の間にぽつんと生まれた、もう一つの世界」──そんなふうに思えてくるんじゃよ。