海辺 
高校卒業して間もないころのこと。

  恋い焦がれていた彼女と 久しぶりにデートをした。

 心はドキドキと 動悸が止まらなかった。
気持ちは高揚していた。
  どこを歩いてい居るか わからなかったが
  河川敷に向かっていたようだ。
いつの間にか 堤防を上っていた。
 
堤防からは
大阪の高層ビルディングが連立していた。
うっすら霞みがかかっていた。

 いつも彼女とこの堤防に来て
追いかけっこしていた夢を見ていた。

  今も夢を見ているのかと 錯覚してしまう。
  でも今日は夢ではなく現実だ。
  少し歩くと鉄橋が見えてきた。

  川の中央近くで
若者たちが
楽しそうに水上スクーターで走り回って
いるのが見えた。
 
「河原に降りよう!」と提案した。
「うっうん」小さな反応が返ってきた。
 
太陽が遠くに沈みかかっていた。
夕焼けが
真紅のグラデーションを織りなし 見とれた。
 
 いつの間にか
川べりの水際まで近づいていた。
  そこで 二人はしばらく腰を下ろし、
  戯れる 水上スクーターを楽しみ
夕焼けにぼーっと見とれていた。
 
話したいことは山ほどあったのに
今は何もまとまったことは話せないでいた。
  最近読んでいたラッセルの恋愛論の 断片を
わかってかわからないでか? 口走っていた。
 
今の雰囲気には場違いな会話だ。