インスト曲「思い出のマジョルカ」(1982)
を聴くと、どうしても
中森明菜の「ミ・アモーレ」(1985)が
頭をよぎります。
雰囲気が驚くほど似ているんです。
でも、それもそのはず。
どちらも松岡直也の手による作品だから。
「松岡直也って誰?」という人も
いるかもしれませんが
彼は日本のラテン・フュージョンを
牽引した第一人者です。
中森明菜だけでなく
阿川泰子やマルシアといった
“大人の色気”をまとった女性シンガーにも
多くの楽曲を提供してきました。
二つの曲が似て聞こえるのは
ラテン・フュージョン特有の強い色彩感
マイナー調でありながら
情熱的なメロディライン
そしてその奥に潜む陰影が
共通しているからです。
まさに、同じ作曲家の同じ感性です。
マジョルカ島がどんな場所かというと
スペイン屈指のリゾート地です。
写真を見るだけでも、青い空
透きとおったターコイズブルーの海
白い砂浜のビーチ
そして歴史的建造物が並ぶ
落ち着いた街並みが広がっています。
太陽が降り注ぐ地中海の美しい観光地で
暗さや影といった雰囲気は
まったく感じられませんね。
それにしても「思い出のマジョルカ」は
タイトルからイメージされる
「明るい旅の記憶」とは全く違って
哀愁を帯びたメロディーです。
UnsplashのFederico Di Dio photography
「過ぎ去った旅の時間を
振り返って切なくなる曲」
とよく言われますが、それ以上に
どこか切羽詰まったような
何かに追い立てられている気配すら
感じられます。
その理由のひとつが
ラテン特有の楽器クイーカの存在です。
動物の鳴き声のような音が
バックで絶えずテンポを刻み
曲全体に独特の緊張感を与えています。
クイーカは「ミ・アモーレ」の
後半にも登場しますね。
さらに、転調とともにリズムが
わずかに焦ったように揺れ
疾走するような展開へと変わっていくあたりは
許されない恋の逃避行や
追手から逃れて地の果てまで
走り続けるような
スリリングな情景を思い起こさせます。












