映画の残り時間が少なくなってきて
会場がざわつき始めた。
待っていたホラーシーンや
グロテスクな場面は
ついに最後まで現れない。
これで終わりなのか。
死人が歩く村はどうなった?
魑魅魍魎はいつ現れる?
それを目当てに見に来たというのに。
会場のあちこちから
中学生や高校生たちの
不満げな声やブーイングが上がり始めた。
彼らはエンドロールが流れ始めると
最後まで見届けることなく
ガタガタと音を立てて席を立った。
ため息や悪態を漏らしながら
ぞろぞろと帰っていく。
耀と浩も、思いがけない展開に
呆然として動けなかった。
「途中からおかしいなとは思ってたけど
すごい期待外れだったね。
なんだかタイトル詐欺みたいだ」
浩がつぶやいた。
「彼らが怒るのも無理ないよ」
耀はまばたきもせず
じっと椅子に座っていた。
「どうしたの? 行かないの?」
浩に声をかけられ、耀は我に返った。
「ああ、そうだね。僕らも行かないと」
「何か考え事でもしてた?」
「うん……まあね……」
ほとんどの観客が出て行き
耀たちがホールへ出ると
例の小笠原監督がスタッフ二、三人と
立ち話をしていた。
耀と浩が何とはなしに会釈をしながら
通り過ぎようとすると
「どうだった?」
と監督の方から声をかけてきた。
「ええ。ホラー映画だと思って
見に来た子たちは拍子抜けしたでしょうね」
「君たちもそうなのかい?」
「まあ、そうですね」
監督は肩をすくめた。
「自分たちの怠慢を隠すために
生きている人間を死んだことにする
役所の職員。
十分に魑魅魍魎の世界だと思うけどね」
「そう言えなくもないですけど……」
「成功だよ。『ろくでなし』
『ばかやろう』『金返せ』ってね。
ブーイング上等さ」
監督は乾いた笑い声を上げた。
それでキャッチコピーが
「ひなんごーごー」なのか。
耀と浩はあきれたように顔を見合わせた。
「考えてみてよ。
そんな映画を最初から見せるなんて
できないだろう?」
「じゃあ、なんでホラー映画みたいな宣伝を?」
「俺は社会派の映画監督だよ」
監督は不敵に笑った。

