耀は窓から降りて敷地を走ると

階段をかけ上がり

ホテルの正面に向かった。

 

 

ほんの十数mほどの距離なのに

永遠にたどり着かないように遠く感じる。

 

 

足がもつれて焦れったいぐらい

先に進まない。

前のめりになって建物の角を回った。

 

 

玄関から入ると、職員専用ドアを探し

地下に通じる階段を降りた。

 

 

照明は薄暗くところどころ

点滅を繰り返している。

無味乾燥な壁と廊下が長く続いている。

 

 

<シャワー室>、<機械室>、<ボイラー室>の

前を通り過ぎると一番奥は<倉庫>だ。

 

 

ドアノブをゆっくり回すと

先ほどの人物が

開けていったままなのか

鍵はかかっていなかった。

 

 

そっとドアを押し開け中に入ると

閉め切った部屋のよどんだ空気が

鼻をついた。

 

 

広い部屋で壁沿いに

家具什器が無造作に置かれている。

 

 

耀が先刻

窓からのぞいた部屋にまちがいない。

 

古びた寝台に横たわっていたのは

やはり浩であった。

 

 

遠くからは

ただ眠っているかのように見えたが

近づいてみると

尋常じゃない様子がわかった。

 

 

顔が青白くむくんでいて

目の周りは薄く黒ずんでいる。

顔や体に触わってみると驚くほど冷たく

脈をとると今にも止まりそうなほど弱々しい。

耀は心底震え上がった。

 

 

浩は今や死にかけている。

 

 

埃だらけの寂しい部屋で

自分以外の誰にも

看取られることなく死にかけている。

 

 

誰か、誰か助けてくれ。

 

 

浩の手を握りしめ

声にならない声で叫んでいた。

不覚にも涙がこぼれてきそうになった。

 

 

その時、「ここで何をしている」

鋭い声がひびいた。