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耀と浩が南関に来て四日目の晩。

 

 

日付が翌日に変わろうかという時刻

辺りの家々は闇に沈み

ひっそりと静まりかえっていたが

「五山荘」には小さな明かりが灯っていた。

 

 

風に虫の音が混じり

昼間の蒸し暑さはずいぶんおさまっている。

 

 

耀と浩は、ちょっと前に戻ってきていたが

夜寝る前に必ずその日の

報告と打ち合わせを

すると決めていたので

食堂のテーブルについていた。

 

 

一日の疲れと落胆のせいで

しばらくは口もきけずに

ただ呆けたように座っていた。

 

 

馬田はまだ帰って来ていないが

こちらは別のけしからん理由で

夜遅くまでうろついている。

今日こそ例のものを買うぞと

朝から意気込んでいた。

昨日まであちこち下見して

目星をつけていたらしい。

 

 

耀が大きくため息をついた。

 

「奴はどこにも現れないな。

いったい何を考えているのだろう」

 

「やっぱり伯父さんが言ったとおりだよ。

九鬼は最初から

取引するつもりなんてなかったんだ。

僕たちがあたふたしているのを見て

きっと陰で笑っているだろうよ」

と浩が言う。

 

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二人は「花の樹」の店主から

意味深な言い方で釘を刺されたが

それでひるんだりはしなかった。

かえってファイトがわいた。

初戦を突破した事で度胸がついたのだ。

 

 

他の店に当たった時も

多少の程度の差こそあれ

ほぼ似たような反応を返された。

 

 

九鬼の名を出すと驚いて一瞬

黙りこむ。

次に不快な様で眉をひそめ

「どうしてそんな事を聞くんだ?」

と、敵意のこもった目でにらみつける。

 

 

彼らは急に怒鳴りだしたり

力ずくで追い返そうとしたりしたが

耀たちも簡単には引き下がらなかった。

 

 

粘りに粘って

九鬼が店に現れるかもしれない

時間を何とか聞きだした。

 

 

本当は九鬼の居場所や

潜伏先がわかれば

一番いいのだが

それについて彼らは

最後まで口を割らなかった。

 

 

隠しているのではなく

本当に知らないようだと

二人はあきらめた。

 


 

 

九鬼を探しだすため

二手に分かれて張り込みを始めて

三日目だが

いまだ九鬼の消息はつかめていない。

 

 

「手の打ちようがないな。

こちらとしては相手の出方を待つしか

ないんだから」

耀は言った。

 

「ただ待つ。何もしないで

ひたすら待つというのが

こんなに辛いなんて」

 

 

「約束の期限まで

あと三日しかないんだよ」

と浩が嘆く。

 

 

「いや、まだあと三日ある。

この三日が正念場だ。

三日のうちに何とかしなければ。

 

三日たってそれでもダメなら

その時また考えるさ」

 

 

自分たちに望みを託して待っている

伯父の期待には何とかこたえたい。

二人は明日の張り込み予定リストを

再度確認した。