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百雄伯父さんと碧伯母さん夫婦は
朝から晩まで店に立ち続けていた。
店を閉めてからもスープ作り
タレ作り、チャーシューの仕込み
といった作業が休みなく続く。
それだけ働いて
店が繁盛しているにも関わらず
不思議と手元に金は残らなかった。
良心的な値段とサービスを貫いていたからだ。
店の裏が自宅だったが
耀と麗華が幼いうちは
目が届いて寂しい思いをさせないよう
店の奥にある和室で過ごさせていた。
店の仕事が一日中忙しく
子供たちと過ごす時間がなかなか取れない。
そのため伯父さんは、昼と夜のピークの合間
客が引いたわずかな時間に
おやつを作ってくれた。
それが、子供たちとの
束の間の触れ合いの時間だった。
そのおやつの中でも二人が一番好きだったのが
「開口笑(カイコウショウ」という
中華風の揚げ菓子だった。
揚げた際に生地がぱっくりと割れ
まるで笑っている口元のように
見えることからその名がついた
縁起の良い菓子である。
たっぷりの胡麻をまとった
団子状の生地を頬張れば
外はサクッと香ばしく
中はホロリと崩れる。
その素朴で優しい甘さが、二人は好きだった。
一度、店でサービスとして出したら
好評だったのでメニューへ加え
今ではテイクアウトも出来るようになっている。
粉と卵、砂糖、ラードを混ぜ合わせ
手際よく丸めた生地を
ピンポン玉ほどの大きさに切り分けて揚げ油へ。
やがて、香ばしい胡麻の香りが
ふわりと漂いはじめる。
伯父さんに「危ないから離れていなさい」
とたしなめられても
兄妹は調理場を離れようとはしなかった。
揚げ油の中の団子を
二人は飽きることなく見つめ続ける。
「あ、口が割れてきた!」
「よし、そしたら火を少し強めて
焦げないように転がすんだぞ」
全体がこんがりとキツネ色に染まったところで
引き上げ、油を切る。
二人は揚げたての「開口笑」をほおばり
幸せな気分になる。
耀と麗華は伯父さんが大好きだったし
伯父さんが作るこのお菓子も大好きだった。



