月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

どうして言えなかったのだろう。

胸を張って言えなかったのだろう。

「僕もこの店の奨学生なんだよ。

僕は奨学金をもらって大学に通ってるんだ」 

 

 

もうあの女とは会わないでおこう。

見た目に惹かれて数回デートしたけれど

会話は全くかみ合わなかった。

 

 

向こうも同じだろう。

大学名につられてやって来ただけだ。

次に連絡があったとしても

何か適当な理由をつけて断ればいい。

 

 

 

道の正面からどっと笑い声があがった。

若い男の集団が傍若無人に横に広がって

こちらに向かって歩いてくる。

 

 

 

話すのに夢中になっている男と

危うくぶつかりそうになったので

耀は避けたが

なぜ自分の方が避けなければいけないのか

腹立たしくなった。

周りのことなどまるで眼中にない

傲慢さをいまいましく思った。

 

 

 

彼らは見た目

そんなに自分と年が変わらない。

「〇〇ゼミ」、「○○教授」という言葉が

聞こえてきたので

大学生だと考えられるが

彼らの送っている学生生活は

耀のそれとはおよそ違うだろう。

 

 

耀の通っている大学は

世間一般的には一流校で

金持ちの子弟が多く入ると思われているが

多数派がいる所には必ず少数派がいる。

 

 

地方出身者で

なまじ頭が良かったばかりに

ぜひ東京の有名大学をと思ったものの

真の金持ちのエリートとの

格差を思い知らされ

肩身の狭い思いに悩まされるものなのだ。

 

 

その典型的な例が

キャンパス内の学生食堂。

学食といっても

赤い屋根が人目をひく

二階建てテラス式のモダンな外観の建物だ。

 

 

 

 

一階はセルフサービス式で

モーニングやランチが

手ごろな値段で食べられる。

 

 

二階は一階よりはやや値段が高めだが

気軽に洋食を味わえるレストランだ。

張り出したオープンテラスでは

お茶も楽しめる。

 

 

 

朝8時半から夜9時まで開いているが

多くの生徒がここで昼食をとるため

昼時にはかなりの人数が殺到する。

 

 

初めて訪れた人は近くまで来て

もうひとつ別の地下への入り口が

目立たぬように存在することに気がつく。