月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

 

後ろを振り返ると、そこにいたのは

見上げるような背の高い男で

肩から上は闇の中に溶け込み

まるで2人に覆い被さるように

暗い不吉な大きな影が広がっている。

 

 

親戚のおじさんでないことだけは

明らかだった。

 

 

そのとき表を通り過ぎた車の

ヘッドライトが

一瞬だけ部屋の中を照らし

男の顔をはっきりと映し出した。

 

 

耀は身震いした。

人間じゃない。

顔には幾筋もの大きな皺が刻まれ

冷たい目が耀を見下ろしていた。

 

そこから先の記憶は耀にはない。

 

 

平和な日々は

ある日突然終わりを告げた。

 

 

UnsplashAshlee Marie

 

幼い耀にとっては何の前触れもなく

両親がいなくなってしまったのだ。

耀は六歳だったので

その時のことはかすかに覚えているが

二歳だった麗華はどうだろうか。

 

 

耀は覚えていないことを望んだ。

二人は割と仲がいい兄妹だと思うが

今まで二人で話しあったことはない。

 

 

周りの大人も

「不慮の事故で亡くなったんだよ」

としか言わず

あとは口をつぐんで一切触れたがらなかった。

 

 

だから成人した今まで

大人に尋ねることはなかったのだ。

はたして本当に現実だったのか

夢だったのかわからないまま

ふだんは胸の奥深くにしまわれていている。