UnsplashJohn Salvino

 

月・木・土に投稿予定です飛び出すハート

 

「上海ルネサンス」は

街の中心から離れた住宅街に

突如現れたピカピカの

白いホテルみたいな建物だった。

 

 

ドアを開けると

エントランスホールは

三階まで吹き抜けになっている。

ほーっとため息が出そうなぐらいの

ゴージャス感だ。

 

 

優雅な身のこなしの若いウェイターが

耀と浩を席に案内してくれた。

 

 

メニューを見ると

お値段が高めなので

若者は少なく年配の客で占められている。

 

 

メニューを見ただけではどんな料理が

運ばれてくるか全く未知だった。

 

 

「中華料理店と言うよりは

シノワズリー・レストランと呼んだ方がいいね。

なんでも上海料理をベースに

フレンチの要素を取り入れた

モダン・チャイニーズだそうだ」

耀は事前に仕入れた情報を披露した。

 

「何、それ。創作料理ってこと?」

 

 

天井は高く、調度品も値の張った

アンティークものが多い。

店内のインテリアも東洋と西洋が融合している。

 

 

耀は考えを巡らした。

 

あの男九鬼は今、この店に来ているのだろうか。

 

あこぎな経営姿勢で敵が多く

警戒心が強い彼は

めったに人前に姿を現さないが

この店には愛情を注ぎ

頻繁に足を向けるという。

 

 

来た客を陰から見はって秘かに値踏みをして

商売に役立てているという噂もある。

 

 

どんな容貌をしているのだろう。

どこで自分たちを見張っているのだろうか。

俺にはそいつがわかるだろうか。

 

 

 

まるでマネキンのようにスタイルのいい

若いウェイターたちは如才なく

テーブルのまわりを動き回っているが

彼らは本当にただのウェイターなのだろうか?

彼らさえも何となく怪しく感じるのは

考えすぎだろうか?

 

 

何も変わった動きはない。

接触してくる様子もない。

 

 

緊張しているせいか我慢できなくなって

「ちょっと失礼」と耀が立ち上がると

浩も「じゃ僕も」と付いて来た。

 

 

今、二人いっしょに席を立つのは

レストランでは

ご法度かもしれないがしょうがない。

 

 

ドアを開け広い通路空間に出た。

トイレは右手の奥だ。

 

 

「ねえ、あれを見て」と浩が囁いた。

いつからそこにあったのだろう。

 

 

来た時には全然気がつかなかったが

ホールの一角に

分厚い紫色のビロードのカーテンで

覆われたブースが設けられている。

 

 

耀と浩は目を見あわせて

お互い同じことを考えているのがわかった。

 

 

段ボール紙の看板に「占い」と書いてあるのが

いかにも急ごしらえという感じで

怪しい匂いがぷんぷんするのだ。

 

 

「ふーん、占いって当たるのかな」

と耀が言うと

 

「当たりますよ。どうぞ、お入りください

中から、しゃがれた老人のような声がして

二人は思わず笑いをこらえた。