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  登場人物 

  林家  長男 林 百雄  らーめん亭のオーナー    

      次男 林 秀峰 故人 

       妻    林 璐美 故人

       子 林   曜 

       子 林   麗華

         三男     林   剛英 (武術道場のオーナー)

       子    林   浩 

 

 

「店が危ない」

「らーめん亭が危ない」

林家の親族同士が顔を合わせると

そんな言葉が囁かれるようになった。

 

 

「らーめん亭」は

初代が90年前に中華街で店を起こしてから

代々引き継いできたファミリービジネスで

今は三代目の百雄伯父が店長である。

 

 

曜と麗華の両親は二人が幼いころに亡くなった。

死因は不慮の事故だと聞かされている。

 

子どものいなかった長兄の百雄夫婦が

甥っ子、姪っ子を引き取って

自分の子として育ててくれたのだが

二人がまだ小さい時だったのが幸いだった。

 

物心ついた時にはすでに伯父夫婦が

育ての親として傍らにいた。

 

 

 

そして、浩の父親

林家の三兄弟の一番末の弟、剛英は

中華街から少し離れた所で

武術道場を開いているが

浩が小さい頃は「らーめん亭」に

よく預けられていた。

 

年の近いいとこ同士は

転げまわるようにして遊んだものだ。

 

 

周りの大人は折りにつけしみじみと口にした。

「三人はらーめん亭の中で育ったようなものだね」

「三人兄弟のように育ったね」

 

 

三人はいつもいっしょだった。

店の奥の狭い部屋で勉強し

点心の揚げ菓子をおやつにつまみ

中華街を遊んで回り

道場で武術の稽古をする毎日だった。

 

 

浩がいて、親戚が見守って、中華街の中で育って

耀と麗華は

早くに両親を亡くした寂しさを感じずにすんだ。

 

そして今、耀と浩は学校を卒業後

見習いとして伯父の下で働いている。

 

 

だから、その生活の礎ともいうべき

「らーめん亭」がなくなるなんて

想像もしていなかったのだ。

 

 

店を閉めた後、百雄伯父に

「話がある」と言われ

耀と浩はテーブルを囲んだ。

 

 

「もうだめかもしれない。

いろいろ手を尽くしてみたが

もう八方ふさがりだ。

覚悟していてくれ」

と伯父から打ち明けられたとき

耀と浩は耳を疑った。

 

 

呆気に取られ

しばらくは言葉も出なかった。