marian anbu juwan from Pixabay

 

 

夜空はガラスのように透明な藍色で

地上近くに刷毛ではいたような

白い筋雲が伸びていた。

 

 

芳しい香りがほのかに漂ってくるのは

タイザンボクがどこかに植えてあるからだろうか。

 

 

街灯やビルの明かり、店のネオン

車のライトが通りを明るく照らしている。

 

他に歩いている人もちらほらいる。

 

そのうち街の灯りも車の往来も

まばらになってくるだろう。

 

 

私はつくづくバカだ。

課長にも腹が立ったが、自分にも腹が立った。

 

 

肩に掛けている紺のトートバッグの中には

ブルーの小箱が入っている。

ティファに―のオープンハート。

 

 

 

どうしてこれを受け取ってしまったのか。

どうして「だめです」と言って

返さなかったのだろう。

 

 

ついうっかり受け取ってしまっても

時間内に返すチャンスはあったはずだ。

 

 

おもちゃだからとか

出張の土産だからとか

訳のわからない理由で丸め込められたとしても。

 

 

「往年の大スターF・Aに似ている」

と言っていたマトリョーシカ先輩に

今日のふてぶてしい課長の姿を見せたら

どんなに驚くだろう。

 

 

「明日からでもつけておいでよ。

目立つのが嫌ならば

ブラウスの下にでも-」だって。

 

 

気持ちの悪い冗談だ。

課長がえり子の下着姿を

想像しているのだとわかって衝撃を受けた。

 

 

これを着けることはまずないだろう。

絶対にない。どうしよう。

捨ててしまおうか。

 

 

そこの歩道の脇の植え込みの中にでも

放り投げてしまおうか。

 

 

えり子の慎重な性分がそれを止めさせた。

後でどう役に立つかわからないが

セクハラの証拠のため(?)

とっておいた方が得策だと思った。

 

 

想像の中でだけ、剛腕投手のように

思いっきり腕を振りかぶって

歩道に投げ込んだ。

 

ちゃりん。

 

ネックレスは木端みじんに

砕け散ってしまった。