「ねぇ、ちょっといいかな」
清司が声をかけると
よし子嬢は手を止めて振り向いた。
「二口になっている電源タップはあるかな。
できれば三角形のものがいい。
余っている古いものでもいいよ」
「電源タップって何でしょう」
彼女は首をかしげた。
とぼけているわけではなさそう。
本当に知らない様子だ。
「ああそうだね
僕の言い方が分かりにくかったかも。
何て言えばいいだろう。
コンセントに取り付けるものだよ」
「コンセント?」
彼女は尻上がり調に節をつけて
笑いながら言ったので清司も少し笑った。
コンセントもわからないようだった。
そう言われると
清司も確たる自信がなくなってきた。
確か日本語のコンセントは
英語では全く違うものらしい。
これは実物を見せて説明しないと-。
壁のいわゆるコンセントを
「これ」と指さして
「この差し込み口が足りないので
二又になっているものが欲しいんだ」
彼女は耳を傾け、うんうんと頷いている。
いつもは清司に対して白けた態度だが
興味をひかれたのか
協力的で素直な態度をとっている。
日隈たちとしゃべっている時と同じ態度だ。
初めの印象が無愛想なだけで
打ち解ければ本当はいい子なのかもしれない。
彼女が
良き話し相手になるかもしれないと思うと
清司は心が浮きたってきた。