「ねぇ、ちょっといいかな」

清司が声をかけると

よし子嬢は手を止めて振り向いた。

 

 

「二口になっている電源タップはあるかな。

できれば三角形のものがいい。

余っている古いものでもいいよ」

 

 

「電源タップって何でしょう」

彼女は首をかしげた。

とぼけているわけではなさそう。

本当に知らない様子だ。

 

 

「ああそうだね

僕の言い方が分かりにくかったかも。

何て言えばいいだろう。

コンセントに取り付けるものだよ」

 

 

「コンセント?」

 

彼女は尻上がり調に節をつけて

笑いながら言ったので清司も少し笑った。

 

 

コンセントもわからないようだった。

そう言われると

清司も確たる自信がなくなってきた。

 

UnsplashKelly Sikkema

 

確か日本語のコンセントは

英語では全く違うものらしい。

これは実物を見せて説明しないと-。

 

 

壁のいわゆるコンセントを

「これ」と指さして

「この差し込み口が足りないので

二又になっているものが欲しいんだ」

 

 

彼女は耳を傾け、うんうんと頷いている。

いつもは清司に対して白けた態度だが

興味をひかれたのか

協力的で素直な態度をとっている。

 

 

日隈たちとしゃべっている時と同じ態度だ。

初めの印象が無愛想なだけで

打ち解ければ本当はいい子なのかもしれない。

 

 

彼女が

良き話し相手になるかもしれないと思うと

清司は心が浮きたってきた。