清司も仕事上

こういうタイプに接することは多く

えせ正義漢には常々閉口していた。

他人のことは厳しく糾弾しても

自分には甘いのだ。

 

 

定例会の時は早めに来て

アルバイトの女の子に

こっそり私用のコピーを頼んでいる。

 

 

委員であることを笠に着て

誰も指摘しない限り

それが許されると思っているような人物だ。

 

 

正義感の発露などではない。

人が弱り目にある時に

ここぞとばかり責めたてるのが好きな輩だ。

 

 

いったん言いだしたら

気が済むまで言わせるしかない。

本来ならば事務局の立場で

何とか早く収まるように感情移入するのだが

一方で室長たちが困っているのを

見るのが小気味よかった。

 

 

積算については係長が説明に立った。

「加算率について本来〇、〇五%とするところを

五%として誤って計算しましたので

えー。それで、えー」

と途中で口ごもってしまった。

 

 

あれこれ考える必要なんてない。

答えはわかりきっているのだからと

清司は思うのだが

よほど言いたくないらしい。

 

 

ややあって重い口を開く。

「その結果、金額にして

約五○万円ほど高く積算してしまいました」

 

 

「おーっ」

と会場からどよめきが起こった。

 

 

これが単純ミスだったなら

本当にあっぱれというしかない豪快さだ。

事務局は亀のように

ただひたすら首を縮めて

苦しい時間を乗り越えるしかなかった。

 

 

小一時間たって何とか会議は終わった。

 

 

「彼はスタンドプレーが好きだからな」

室長は会議室から出ながら

誰に言うともなく苦々しげに言った。

 

 

 

 

 

 

 

※ 2021年2月~に掲載したものを

   修正して再投稿したものです