〈 清司のパート 〉
その時、ふとプリンターで
帳票の出力をしていたのを思いだした。
データの量が多いので
昼休みの時間を利用して済ませようと思ったのだ。
すっかり忘れていた。
今ごろ大量の紙があふれ出し
床に渦を巻いているかもしれない。
いったん気になりだすと
心配でたまらなくなった。
傍にいる一人に「ちょっと戻ってくる」
と小声で言うと、そっと練習から外れた。
室内には誰もいなかった。
年配の職員たちもまだ外出中のようだ。
紙は思っていたほどひどい雪崩状態ではなかった。
なんとか順調に打ち出していた。
先頭の数枚を折りたたみ
その上にうまく下りて重なっていくように
位置を調整した。
しばらく側に立って流れ具合を見守って
これで取りあえずは大丈夫と
清司が練習に戻ろうとした時だった。
「あの―」と遠慮がちな声が背後から聞こえた。
振りかえると後方入口ドアの所に
封筒を抱えた若い女性が立っていた。
所在なげな様子を見ると
少し前からそこで待っていたのかもしれない。
「お昼休み中なのにすみません」
女性は清司と目が合うとぎごちなく微笑んだ。
※ 2021年2月~に掲載したものを
修正して再投稿したものです


