〈 清司のパート 〉

 

「今日から昼休みにバレーボールの練習をやる」

 

 

突然、日隈が言い出した。

秋の恒例行事、全庁挙げての

バレーボール大会に向けての準備だという。

 

 

別館裏庭にはちょうど職員のための

小さな運動場があり

バレーボールコートやテニスコートがある。

 

 

 

時間外のサークル活動に使っているものだ。

 

 

時おり開け放った窓の下から

ボールの弾む音やかけ声、笑い声が

聞こえてくることがある。

 

 

ただ問題があった。

昼休み、年配の職員たちは

ほとんど出払ってしまうので

若手までいなくなると室内は無人になる。

 

 

いくら来客の少ない別館だからといって

全員席を離れてもいいものだろうか。

 

 

清司は自分が留守番で

残ることにしようかと思ったが

練習に参加しなかったら

陰でいろいろ言われるに違いない。

 

 

直接声をかけられたわけではないが

日隈が人前で言ったことは命令に近いのだ。

 

 

結局、消去法で参加することにした。

 

 

いざ練習を始めてみると

日ごろ覇気のない連中が

まるで別人のように溌剌とかけ声をあげ

きびきびした動きを見せるのに驚いた。

 

 

清司は午後の仕事のことを考えて

ほどほどにセーブしていたが

彼らはおかまいなしにコートを駆けまわり

たちまち全身汗だくになる。

 

 

 

午後はきっと眠くてたまらないだろう。

彼らは仕事の合間にバレーボールをやっているのか

バレーボールの合間に仕事をやっているのか

さてそのどちらだろうか。

 

 

清司は自分では面白いギャグを考えたつもりで

クスッと笑ったが

この場ですぐに言えないことに気づき

残念に思った。

 

 

今度えり子に会った時に披露しよう。

 

※ 2021年2月~に掲載したものを

   修正して再投稿したものです