〈 清司のパート 〉
五年前に市長選挙があった。
再選確実と言われた前市長は
大方の予想をくつがえして僅差で破れた。
そしてお約束通りに
何名かの側近は閑職に追いやられた。
いわゆる報復人事というやつだ
そのうちの一人が
前市長の第一秘書だった現在の室長だ。
他の側近たちは一、二年のみそぎ期間を経て
重要ポストに返り咲いたというのに
室長はなかなか復活の目途も立たず
いまだ別館に据え置かれたままの状態だ。
「異動の時期になると室長がピリピリして
たまらなかった」
「自分より先に巣立っていく若手に
厳しく当たるのもそのせいだ」
と資料室の内情を知る人は言う。
室長席の右席と左席には
二人の審議員が控えている。
彼らは定年間近で室長よりずっと年上だが
定年をつつがなく迎えるのが第一目的なので
彼らが室長に対して意見することはない。
その一方、前市長のカバン持ちの時代を
知っている人の中には
「本来ならこんな所に留まっている人ではない」
と擁護する人もいる。
「昔のあの人はすごかった。
決して侮ってはならない人だ」
と力を込めて言う。
そうだろうか。
過去は問題じゃない。
今が全てじゃないのか、と清司は思う。
今が大事。
※ 2021年2月~に掲載したものを
修正して再投稿したものです

