☆ 「赤い帽子」の女の子です
〈 清司のパート 〉
女友達のえり子とドライブした時
彼女が言っていた。
「いつもは通り過ぎてしまう小さな道に
ほんの気まぐれで飛び込んでみたら
思いがけない場所に出てしまって
びっくりしたことってない?
切れ切れに見えていた道が
実は全部ひとつにつながっていた
事がわかった時
長年の謎が解けたようで
すごくすっきりしたわ」
自分はハンドルを握りながら
「そうだね」と頷いた。
言い得て妙だと思ったものだ。
彼女はその時こうも言った。
「でも私は基本的に大きな道の方がいいの」
「どうして?」
「だって安心だから」
「まあ、それはそうだけど」
「見通しの悪い道は
一回一回止まらないといけないでしょ。
横から急に何かが飛び出してきて
ドキッとすることがあるわ。
やっぱり安全が第一よね。
だから私は時間がかかっても大きい
道の方を通るの」
清司は、彼女とのやり取りを今
不思議な感慨をもって思いかえしていた。
数か月前のえり子の例え話は
はからずしも今の自分の状況を言い当てている。
今の職場だ。
職場の人間は当てにならない。
いきなり道に飛び出せば
思わぬ障害物に突き当たる。
ブレーキかけながら進まなければいけない。
行く手にT字路が見えた。
※ 2021年2月~に掲載したものを
修正して再投稿したものです
