〈 清司のパート 〉

 

清司は、ふーっと息をもらし

シートに深々と腰をあずけた。

 

 

目が覚めるような発見だった。

今まで,

まるで気づかなかった。

 

 

自分が寄り道することもなくわき目も振らず

ただ往復していただけの道のすぐ側に

一歩踏み込めば

もう一つの町の表情があったなんて。

 

 

五月の憂鬱が

少しだけ吹き飛んだような気がした。

 

 

小さな町の向こう側には

表通りに面した低層ビルや

マンションの背面が見えたが

裏から見ると、猥雑で貧相な感じがした。

 

 

日頃は言わば、建物の

きれいな表看板しか目にしていないが

芝居のセットの

書割に書かれた風景のようなものだ。

 

今は裏側に回って仕掛けを見ている。

セットの内部はこんな風になっている。

 

 

そう言えば女友達のえり子とドライブした時

彼女が言っていた。

 

 

「いつもは通り過ぎてしまう小さな道に

ほんの気まぐれで飛び込んでみたら

思いがけない場所に出てしまって

びっくりしたことってない?

 

 

切れ切れに見えていた道が

実は全部ひとつにつながっていて

 

最終的にここに至っていたんだ

という事がわかった時

長年の謎が解けたようで

すごくすっきりしたわ。

 

 

どうして今までこの道を通らなかったのかと

不思議に思うぐらい」

 

 

※ 2021年2月~に掲載したものを

   修正して再投稿したものです