UnsplashPengxiao Xu

 

田辺聖子作品で一番知られているのが

この『ジョゼと虎と魚たち』(1984)でしょうね。

障がい者のクミ子(ジョゼ)と

大学生の恒夫との恋物語です。

 

 

2003年に一度、妻夫木聡・池脇千鶴主演で

実写映画化されましたが

最近では2020年に

アニメ版、韓国版と相次いで公開されました。

 

 

 

タイトルはお洒落ですが

「ジョゼ」と「虎」と「魚たち」には

象徴的な意味が込められていて

濃密な世界観を形作っています。

 

 

 

原作は短編小説で文庫本26ページと短いので

映画になると登場人物が増えたり

エピソードが付け加えられたりしていて

 

 

 

原作のニュアンスに一番近いのは

2003年の妻夫木・池脇版ですが

文字で見るのとは違って

実写ならではの生々しさを感じました。

上野樹里がオリジナルの恋敵役で

出てきます。

 

 

 

 

アニメ映画では

きれいな絵柄からだいたい想像できたけど

タブーに挑戦した意欲作のはずが

ラブ・ファンタジーになっています。

 

出てくる人はほぼ皆いい人。

クミ子のわがままさえ可愛く思えてしまう。

 

 

原作と一番乖離しているのが韓国映画。

骨格だけ取って

全く別物になったと言っていいほどです。

 

 

喜怒哀楽の激しい韓流ドラマを

想像していましたが

水彩画のように静かな映画でした。

 

 

ジョゼのキャラクターが

ずいぶん変わっています。

高飛車なキツイ女の子だったのが

おとなしくて健気な女性に変身。

 

 

 

 

 

結末はそれぞれ違いますが

原作は一番いいところで終わっています。

 

 

今はとりあえず幸せ。

危ういギリギリのところで

成り立っている幸せです。

これから先どうなるかわからないけれど…

と言う含みを持たせています。

 

 

 

妻夫木・池脇版は

現実的にはこうなるのかな

きれい事だけではすまされないから

しょうがないのかなと思わせる

あきらめ、寂しさが伝わってきます。

 

韓国版もちょっと似ています。

 

 

アニメ映画は途中から

昔の少女漫画によくあるパターンになって

終わり。

 

 

田辺先生は2019年に亡くなられたので

後の2つの映画は目にしていないですが

もし見ていたらどんな感想を

持たれたのかな~