田辺聖子さんは

歴史小説も書かれていますが

恋愛がテーマの小説が多く

20代の頃はその面白さに夢中になって

次々と読んだものです。

 

 

舞台は関西

会話は大阪弁でテンポよく進みます。

 

主人公は30代で年齢不詳に見える

さっぱりしたかわいい女性。

 

 

相手の男性は同年代のこともありますが

一回り年下の20前後の青年だったり

もしくはずっと年上の大人の男性だったり

します。

 

 

つまり不倫とか複数の人と付き合っていて

身勝手で奔放な女性のようですが

読んでいる間はそんな嫌な感じはしません。

 

 

女性の言動が自然に受け取れ

品よく描けているのは、稀有な文才だと言えます。

 

 

 

それは例えば

 

大阪弁を用いたはんなりとした柔らかい

言葉使いや

 

料理好きだった実生活からにじみ出た

作中に出てくる豊かな料理の数々

 

自身がコレクションしていた

ポプリ、ドールハウス、オルゴール人形

レースのハンカチ、ガラス壜など

 

夢々しいガーリィな趣味が散りばめられた

田辺聖子ワールドだからだと思います。

 

 

UnsplashAnnie Spratt

 

NHKの朝ドラ「芋たこなんきん」では

田辺聖子さんの半生がドラマ化され

明るい軽快な面が強調されていましたが

 

 

彼女の書く恋愛小説の結末は

ほとんどハッピーエンディングではなく

意外にシビアで時に残酷

ほろ苦いものが多いのです。

 

 

どれも甲乙つけがたいけれど

一番好きなのは・・・

(どの作品とは言いませんが)

 

男性の人物造形のすばらしさもさることながら

(若くはなく容貌魁偉だが魂が美しい)

アッと驚く幕切れ。

 

 

ミステリーではないのに

伏線がうまく張ってあったのに驚きました。

 

 

そして終盤で二人が六甲から眺める

宝石箱のような夜景の美しさが

ひときわ輝いていて心に残ります。