UnsplashBenjamin Balázs

 

麗華はしばらく金猫に手を合わせていたが

ふっと気配を感じ四方を見まわした。

誰もいないはずなのに

熱を感じるのはなぜなのだろう。

姿が見えなくても感覚でわかる。

 

 

「痛いっ」

足元をふいに小さな動物が横切った。

ネズミかイタチだろうか。

足首のあたりに

剃刀ですっと撫でたような痛みが残った。

 

次に

遠くでパタンと木箱を閉じるような音がして

ビクッとした。

木箱でないならば窓か戸口が閉まった音?

 

 

「誰かいるの」

麗華は動悸が早くなるのを感じた。

 

「ねえ、誰かいるなら言ってちょうだい」

なにも返事はない。

 

麗華は恐くなって

出口に向かって早足で歩きだした。

 

 

ここにとどまるべきじゃない。

早く出た方がいい。

いや、そもそも来るんじゃなかった。

金猫堂なんて来るんじゃなかった。

今さら後悔しても遅いけど

とにかく早くここを出なければ。

 

 

麗華は走り出した。

 

その時、生臭い獣の匂いを嗅いだ。

熱を帯びた空気の固まりが足もとに絡みつき

短く鋭い鳴き声を聞いたが

彼女には何も見えなかった。

 

 

UnsplashRui Silvestre

 

やがて荒々しい獣の息が耳元で聞こえ

彼女を追いかけてきた。

どこまでもどこまでもついてくる

 

なぜだろう。

外観はそんなに大きなお堂には見えなかったのに

出口の光は遠くに見える。

麗華はさらに走って

靴音がカンカンと堂内に大きく響いた。

 

 

その時、もう一つ

自分とは別の足音が聞こえることに気づいた。

 

誰かがいる。

誰かが追いかけてくる。

恐怖で悲鳴をあげそうになったが

両手で耳を押さえて走った。

 

 

落ち着いて、落ち着いて。もう少しで出口だから。

別の足音が背後に迫ってきた。

出口を目指して懸命に走って

外の光が見えた。

 

もう一歩、あと少し。 

 

これ以上走れないというぐらいに走って

外へ飛び出した。

 

 

追いかけてきた足音はぱたりと止んだ。

麗華は大きく肩で息をした。

 

 

金猫堂の前。

目の前には竹林が広がっている。

額には汗がにじみでているが

やっと人心地ついた。

 

 

見上げるほど高い竹林が

休みなくざわざわと揺れ

時おり激しく先端をもつれさせ

うねらせている。

 

 

しばらく麗華は風に吹かれていたが

突然、目を開けていられないほどの

強風が起こり立ちすくんだ。

 

 

周りの落ち葉が風で舞い上がり

渦を巻いて彼女の体を包みこんだ。

風が去って音が止み顔をあげた時

その眼の奥は金色に輝いていた。

 

 

 

 

 

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