麗華は縁日に一人で出かけ
はたしてその護符所を見つけた。
人が大勢行き交う中で
遠くからでも鬼火のように
ぽつんと灯っているのがわかる。
麗華は吸い寄せられるように向かった。
それはまるで小さな行燈のような佇まいだった。
枠は角材で組み立てられ
横と背面の壁は和紙が貼ってあり
店の内側の柔らかい明りが透けている。
正面上部の木の看板には
墨で「護符所」と書いてある。
中には色の白い人形のような娘が
うつむいて座っていた。
「こんばんは」
声をかけても、ちらっと目をあげただけだ。
「わずかばかりですが」
麗華は、間違えないように
聞いた通りの言いまわしで
お守りがほしい旨伝えた。
娘は無表情のまま
お守りと小さな紙を添えて渡した。
紙は幾重にも折りたたまれ黄ばんでいる。
これに金猫堂の場所が書いてあるに違いない。
開けようとすると今まで黙っていた娘が
唐突に高い声で何か言った。
えっ、と思った時には
もう元のすました顔に戻っている。
まるで娘は機械仕掛けの人形で
仕込んである録音テープが再生されたかのようだった。
尋ねても二度と言わないだろうと
わかっていた。
「今のは大事なこと。忘れてはいけないこと」
麗華は口の中でぶつぶつと復唱しながら
店を後にした。
気になって後ろを振り向くと
行燈の灯りがふっと消えるように護符所は闇に沈んだ。
そして今、麗華は金猫堂の前に立っている。
人気がない林の奥なのに
周囲はきれいに掃き清められている。
彼女は心を決めた。
ここまで来て引き返すわけにはいかないのだ。


