
「なんだか眠たくなっちゃった」
私は、酎ハイを一杯飲んだだけで
アルコールが回ってしまい気持ち悪くなった。
トイレに行って一度吐いたが、まだすっきりせず
戻ってきてカウンターで突っ伏していたら
頭上で「ねえ、この人大丈夫なの?」と声がした。
薄田君に話しかけているのだろう。
心配しているというよりは迷惑そうな言い方だ。
私がふっと顔を上げたらマスターの
険悪な顔と出会った。
「酔っぱらうには早いんじゃないの。
うちはトークを楽しむ店なんだから」
そう言われてもねぇ。
酔っぱらっちゃったものはしょうがない。
しょうがないよ。
私のせいじゃない。
「もう出ようか」
と薄田君がせっかちに促した。
私はふらふらしながら椅子から立ち上がった。
その時、急に胃からこみあげてきて
我慢できずに、わずかだけど
カウンターに吐き戻してしまった。
「Oh No !」
マスターとウェイターはかんかんに怒った。
周囲もざわついた。
「早く出て行って」
他の従業員がテーブル上の吐しゃ物を
始末して消毒している。
薄田君は慌てて会計を済ませていた。
私はめまいで頭がふらついていたが
人のささやくような話し声だけは、はっきりと聞こえた。
今日はマスターえらく機嫌悪いね。
何があんなに気に障ったんだろう。
女の子相手にあそこまで言わなくてもいいのにね。
私たちは追いたてられて店を出た。
マスターとウェイターは私たちの後から
ホールに出てきた。

「何てことしてくれたんだ。
よくも台無しにしたな」
マスターが大声で怒鳴っているが
私には何のことだかさっぱりわからない。
何でそんなに怒っているのだろう。
私に怒っているの?
私が何かしたかしら。
真剣に怒った赤い顔が私に近づいて来て
私の襟首をぐいっとつかんだ。
「うちは酔っ払いが来る店じゃないんだよ」
襟首をつかんだ手に力が入り
私は大きな外人の男に軽々と持ち上げられた。
私の足が宙に浮いた。
その瞬間、私は、はっきりと目が覚めた。