薄田君とこれからも付き合っていくべきか。
別れる潮時なんじゃないかなと思いながらも
今の私には彼のことを相談できる
女友だちもいない。
彼から電話がかかってきて、饒舌に
しゃべられたら、また付き合ってしまう。
彼が「行こうよ」と誘ってきたのは
最近、巷ではやっている外国人バー
「アナザーカントリー」だ。
私もタウン情報誌で紹介しているのを
見て興味を持っていた。
アメリカ人のマスターは元々ツアーガイド。
日本語も流暢で、おもてなし上手。
「日本人と外国人の交流の場にしたい」
と語っていた。
小さい写真だったが、そのマスターが
すごいハンサムなのは見て取れた。
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場所は、歓楽街の一画にある雑居ビルの四階。
エレベータで上がると広いホールがあった。
いくつかのドアがあったが正面にあるのが
「アナザーカントリー」
扉を押し開けて中に入るとそこは華やかな
別世界だった。
いろんな外国語が飛び交い
大勢の人で混みあっていたが
カウンターが四席空いているのが見えた。
短髪で目が細い日本人ウェイターが対応に来た。
私たちを一瞥したあと不愛想に
「今、空いていません」と断った。
「えっ。どうして」
と思ったが私は薄田君と店を出た。
引き返しながら私は
「ねぇ。でも席空いていたよね」
「だめなんだよ」と薄田君は言った。
「店が嫌がるんだ。二人入れたら、次に
三、四人の客が来た時、入れられなくて
店は損するだろう」と分かったような口を利く。
「ふーん、そういうものなの」
と理屈は分かったが納得できなかった。
「あの店サービス精神ないな」と思った。
「ちょっとその辺歩いてこようか」
薄田君は「アナザーカントリー」に
どうしても行きたいらしい。
席が空くまで時間つぶしするつもりのようだが
私は早春の夜風が冷たくてしょうがなかった。
三十分ほどして店に戻ると、今度は入る
ことができた。
店内は誰もが知り合いのように
和気あいあいとして
陽気な雰囲気に満ちていた。
私たちはその場の空気に圧倒され
カウンターで二人身を固くしていた。
カウンターの中には、写真で見たハンサムな
マスターがいて数人の客と談笑していたが、
目が合うとニコッとしてくれた。
私は酎ハイをオーダーしたが
寒い外から熱気のある店内へ移動したためか
一気にアルコールが体中に回った。
二杯目に「ウーロン茶」をたのんだら
先ほどの無愛想なウェイターは
目を丸くして冷やかすように
「フュー」と口笛吹いた。
感じ悪い。この店。
ウーロン茶だってお酒とかわらないぐらいの値段はする。
ただの水を頼んだわけではないのに
いったい何が不満なのだろう。
私は気分が悪くなって吐きそうになってきた。

