《 登場人物 》

 

岡田めぐみ  主人公  学園のアイドルだったが今はひきこもっている

水田ひろ子  めぐみの女友だち

薄田一郎    めぐみの元クラスメート 彼氏に昇格

 

 

 

 

彼が連れて行ったのは、近くの神社の

参道沿いに立つ欧風のカフェだった。

 

ヨーロッパの街角にあるようなガラス張のカフェで

庭にはテラス席が設けてあった。

さすがにまだ寒いので外には誰もいないが

室内の二〇人ほど入るカウンダ―席、テーブル席は

ほぼ埋まっていた。

 

残っていた二人掛け用の席は小さいガラスの

丸テーブルとアイアンの椅子で

太っている薄田君と私にとっては

座り心地はあまりよくないものだ。

 

 

道路に面した大きなガラス張りの窓からは

柔らかい日差しが入ってくる。

 

薄田君は大きな体を窮屈そうに丸め

小さなテーブルに片肘ついて

面白くなさそうな表情をしている。

 

彼が考え事をしている時は頬杖をつく癖が

あるが、それを見るたびに

「行儀よくないな。だらしないな。

両親はどういうしつけをしてきたんだろう」

と思う。

 

 

給仕係がメニューとコップ二杯の水を持ってきて

小さいテーブルの上に置いたので

薄田君は肘を上げた。

 

「注文が決まりましたらお呼びください」

と給仕係は言って離れた。

 

「さあて、何を頼もうか」

 

彼がもう一度重い体をどすんとテーブルの

上に乗せた。

あっという間のことだった。

 

はずみでテーブルの天板はバランスを崩し

メニューとコップ二つは宙に浮いた。

 

私の目には一コマ一コマがスローモーション

のように映った。

メニューは滑り出し、コップの水はあふれる。

私も彼も驚きの叫び声をあげた。

 

私はかろうじて一つのコップをつかみ

もう一つは奇跡的に天板の上で倒れ

水がこぼれただけで済んだ。

 

コップが割れなかったのが幸いだった。

派手に割れる音がしたらもっと周りの注目を

集めたことだろう。

テーブルも床もびしょびしょになった。

 

ガラスの天板は固定してなく支えの上に

置いてあるだけの簡易的なものだったのだ。

 

私が元に戻し、落ちたメニューを拾い上げ

飛んできた店員さんに謝った。

 

彼はうまい具合に避けて水がかからなかった。

首の後ろをかいて小さい声で「ごめん、ごめん」と

言っているけど何もしないで突っ立ったままだ。

 

 

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その日は、いつもほど話は盛り上がらなかった。

カフェを出たあと、二人はショッピングセンターに

寄ったり、本屋で立ち読みしたりしたが

さっさと切り上げて帰った。