《 登場人物 》
岡田めぐみ 主人公。 学園のアイドルだったが今はひきこもっている
福永亜紀 めぐみの親友
下川礼子 めぐみの親友 才女
水田ひろ子 めぐみの元クラスメート 今は1番のよき話し相手
薄田一郎 めぐみの元クラスメート オタクっぽい

薄田君一人と聞いて、私は正直がっかりした。
熱がすっと冷めたような気がした。
おごってもらっても何も嬉しくない。
この集まりに大きな期待をしていたわけじゃないけど
彼一人というのは、あまりにあっけなく肩透かしを食らった感じだ。
彼は私にさっと右手を差し出した。
「今日はよく来てくれたね。よろしく」
かしこまった様子がおかしくて笑いそうになったが
彼は真剣な目をしていた。
私は途中まで右手を出して引っ込め
恥ずかしくなって目をそらした。
ひろ子さんはというと、斜めに首をかしげ腕を固く組んでいる。
「どうして私に前もって相談しなかったの?
ここまで来て自分一人と言われても困るわ」
ひろ子さんの表情は冷ややかで、明らかに不機嫌だ。
「だから謝ったじゃないか」と薄田君も言い返す。
「こんなところで立ち話もなんだから、とりあえず中に入ろう」
私とひろ子さんは顔を見合わせた。
お互い気が進まないのはわかっている。
「さあ、さあ」
彼が再度促し、結局、私たちはきっぱりと「今日はやめる」
と言うほどの理由を見つけることができずに、のろのろと店内に入ったのだ。
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入り口のレジ周りは明るかったが、奥の客席は
ほんのりと薄暗く心地よかった。
天井のダウンライトと各テーブルに
林檎の形をかたどったビーズの照明が置いてあった。
客はまばらだったので、私たちは窓際の大きな
ソファ席に腰を下ろした。
店員がすぐにメニューを持ってきて
私たちはサラダとピザ、それぞれ飲み物を頼んだ。
「めぐみちゃんとは二年の時、同じクラスだったよね」
注文が終わるとすぐに薄田君は話しかけてきた。
「ええ、そうだったわね」
「文化祭の時のこと覚えている?」
私たちのクラスの文化祭の企画は、中国風喫茶店だった。
と言ってもメニューはコーヒー、紅茶、ケーキといたって普通で
数人の女子がチャイナドレスで接待するというのが目玉だった。
「めぐみちゃんがあの中で一番チャイナドレス似あっていたな」
と薄田君は言った。
たわいもないことだったけど
学生時代って本当に楽しかったなと思う。
薄田君は私が覚えていないようなことまで
「めぐみちゃんはあの時こうだったよね」と覚えていたので驚いた。
この人って本当に同じクラスだったんだ。
私は違うメンバーといつも一緒だったから
薄田君がどう行動していたかなんて思い出せない。
教室の片隅にいつも二、三人で固まっていたような記憶がある。
でもその二、三人の顔も思い出せない。
今日来る予定だった人たちは、その時のメンバーなのだろうか。