
《ひろ子のモノローグ》
めぐみから突然電話がかかってきた時は、驚いたし嬉しかった。
人づてに家にこもっていると聞いていたので
「もしよかったらお茶しようよ」と私から誘い出した。
久しぶりに会っためぐみは「病気だから」「太っているから」
と言って遠慮がちだったが
私の目から見ると、彼女の良さは少しも損なわれていなかった。
可愛いところ。無邪気なところ。裏表のないところ。
岡田めぐみは、男子からも女子からも好かれていた。
彼女のことを悪く言う人なんていたのだろうか。
私とめぐみは中学校は別だったけど
学区の境あたりに住んでいるので家は近かった。
たまたま帰る方向が同じだとわかった時
めぐみは「いっしょに帰ろう」と気さくに言ってくれた。
もてる女子ってグループで固まって、近寄りがたい
雰囲気があるけれど、めぐみにはそういうところ全然なかった。
週に一回、土曜日、めぐみといっしょに帰る時間はすごく楽しかった。
私は顔に出ないタイプだけど、内心は「見て見て。私めぐみちゃんと二人だよ。
まるで親友みたい」って誇らしい気持ちだった。
それなのに私ったら佐伯君のことで、めぐみを傷つけるような発言をしてしまって。
彼女には何でも言える雰囲気なので、安心してつい口がすべってしまった。
めぐみが、あまり気にしてないように見えたのが救いだけど。
でも佐伯君は、本当に亜希さんにぞっこんだった。
授業中も頬杖ついて黒板の方は見ずに亜希さんの横顔にずっと見とれていた。
あんなに「好き好き光線」を発している人も珍しかった。
クラスの誰もが知っていた。
でも亜希さんには他に好きな人ができたので、
結局、佐伯君の思いは成就しなかったわけだ。
そして12月には
わが校の伝統行事、一大イベントとも言えるクリスマス音楽祭がある。
カップルで行くのがならわしのクリスマス音楽祭に
佐伯君はめぐみといっしょに行った。
誘ったのはめぐみの方だった。