荷物を背負うと、再び一行は崖沿いの岩場を登り始めた。
日本では信じられないが絶壁沿いの道中、柵なんてなにも無いのだ。
一歩踏み違えたら崖下へ真っ逆さまだ。慎重に進まなければならない。
そういえば昔、はるか20年前にワーホリでタスマニア最南の洞窟を探検した時のガイドのおじさんが覚えていた日本語が「気をつけて」と「落ちたら死ぬ」の二つだった。(←最低限!)
暗い洞窟を進むたびに、振り返って真顔で「落ちたら死ぬ」とカタコトに何回も言われた恐ろしさといったら・・・、20年たった今でもインパクト大である。
あと、エアーズロック(ウルルー)を登っている途中に1人の日本人が風に飛ばされそうになったカメラを取ろうとして自分が飛ばされてお亡くなりになったという話も旅の途中、常に頭をよぎる一つである。
ニュースにはあまりならないが、毎年たくさんの旅人が命を落としたり怪我を負っているのだろう。
まぁ、それだけオーストラリアの旅は危険と隣り合わせということだ。
そんなことを思いながら「しっかりと足元を見て気をつけながら歩くんだよー」と言おうと思ったのに、娘Darrenの後について山羊のようにひょいひょいと軽快に崖を登って先に行ってしまった。
成長したな、娘よ…。むしろ気をつけるのは若くはない親自身ということだ(泣)
こんな崖道をひたすら登ったり歩いたりする。
ビューポイントまで暑かったらそうとう大変そうな道のりだ。涼しくてよかった!

↑道途中、こんな歴史の積み重なった壮大な岩に圧倒されることしばしば。
このスケールのデカさは実際に触れて感じてみないとわからないスケールだ。
岩好きにはたまらないのだ!(って他に岩Loverはいるのか?)

登って行くと、途中から川の絶景を望むポイントが増えてきた。
そんな中、崖の端に立ってDarrenが川を眺めながらしばらく立ち尽くしていた。
以前夕食の時にDarrenに尋ねたことがある。
「11年もの間この北西のツアーをずっと続けているんでしょう?毎回同じ場所を訪れて毎回同じ景色を眺めて、見飽きたり他の場所に行きたいと思ったりしないの?」
「何度来ても飽きないよ。何度来ても圧倒されるし、来るたびに違う景色を見せてくれるんだ。
俺は世界のどこよりも、この(西オーストラリアの)北が一番好きなんだよ」
わたしも立ち尽くすDarrenを見て、「ああ、また違う景色に出会っているんだなぁ」なんて思った。
人生は旅だと言うけれど、出会いと感動が多いほど旅は豊かになる。Darrenの人生はなんと豊かな出会いに満ちた旅なんだろう。そんなDarrenが羨ましくも思えた。
そして、わたしたちもこの壮大な景色に圧倒されながら、また違う自分に1分1秒ごとに出会い続けている。
ずっと未来に続く旅の一瞬一瞬が感動と出会いに満ちていた。
人間が昨日、今日造った物ではない。
地球が毎日1440億回以上自転し雨風嵐を繰り返し、様々な生き物の誕生と消滅を目撃し4億年かけて作り上げた造形である。

↑こちらがZ-Bendの全貌。曲がりくねった渓谷が一望できる。

↑ちなみに展望ポイントの足もとにはこんな昔の生き物の足跡を見つけることができる。
これは太古の生き物、EuripteridaやSea Scorpionとよばれるウミサソリくん。
世界最古の記録だと4億6730万年前から地球に生息していた史上最大級の節足動物でデカいものだと2.5メートルって、絶対に会いたくないサソリくんである。
そして2億年ほど地球に生息していたらしい、われわれの大大大先輩である。

↑その足跡がこちら。
ズビズビズビーーーー、と這いつくばった跡が地球の災害でそのまま保存され残っていた。
なんだ、意外と小さくてかわいい足跡だ。
こんな歴史的証拠もそのまま誰でも踏めるような場所に放置してあるところがオージーっぽい。
説明の看板の一番最後に小さく「この古代の遺産を守るためにこの上を歩かないでね」なんてのんきに書いてあるのだ。
(日本だったら厳重に柵に囲まれ触らないようにカバーされた上に、ウミサソリ饅頭とウミサソリにコスプレしたキティちゃんが売られているはず!)
世界の大造形を目撃した一同は、その感動をそれぞれの胸にしまいながら駐車場までまた息も絶え絶え再びトレッキングである。
何度も言うが、本当に涼しくて良かった。大地の神様ありがとう!




