ちらつく親父の顔
来月、長男がやっと大学を卒業する。
コミカレで3年、今の大学に編入して3年目の大仕事だった。この子、卒業まであと何年かかるんだろうって思った時もあるけど、今の大学に編入して2年目からは、クラス(Credit)を多くとらず、一つ一つのクラスの成績をよくしようと彼なりにがんばったらしい。2015―2016の秋のクラスからは、テストや論文に集中するべく、自分なりに効率よく勉強したそうだ。
彼は小さい頃から、なんでも自分で決めて行動する子だった。悪い道へも良い道へも、どんどん突っ走るタイプ。かと思えば、おもちゃを譲ってもらえなかったら、力ずくて奪おうとせず、他の面白そうなものを差し出して『コレと交換して』ってオファーを出して成功している子だった。
サッカーは5歳から、テニスは7歳から始めた。ドイツに越したばかりの5歳で突っ込んだ地元サッカーチームでは、言葉も分からないのによくやっていた。周りとの距離の取り方が上手い子だから、直ぐに友達がいっぱいできて、言葉もあっと言う間に覚えてしまった。
17歳でその好環境からアメリカに連れてきたときは本当に申し訳なかった。
皆がそれぞれ辛い別れを経験してアメリカに渡ったが、子供達3人はそれぞれよく頑張って心の葛藤を乗り越えてくれたと思う。特に、長男はこちらの高校3年への転入だったから一番大変だったはず。サッカーを通して直ぐに学校での自分の位置を確保したが、学業は二の次。それでもいいと私とオットは思っていた。
その後、高校は普通に卒業できたが、良い大学にそのまま入学できるだけのGPAは獲得できていなかったので、先ずはコミカレでGPAをあげることからのスタートだった。途中までは私もオットも引っ張ったり押したりアメやムチを与えたりしてきたが、図に乗ってきたので途中からはお金を出すのもやめた。一度はバラ色の一人暮らしを経験した彼にとって、実家に戻らざるを得なかったシチュエーションは良い薬となり、スパートをかけて大学編入の切符をやっと手に入れた。
そして3年。やっと卒業できるところまでこぎつけた。
今の世の中、特に男子。アメリカの普通の大学を卒業したところで、安泰な将来が約束されているわけではない。学歴がすべてではないが、学歴社会の世の中なのは否めない。職種によっては、大学卒業証書がなくては履歴書で引っかかりもしない。
以前オットが息子にこう言った。
『僕は今まで沢山の人を面接してきた。特にアメリカ人は、自分を売り込むことが上手くて、こちらもまんまと乗せられる時もある。雇ってみたら、EXELもまともに使えない話にならない人が多くいる。いいか、僕たちがみているのは、不器用でもいいから一つの仕事を最後までやり遂げられる根気なんだ。何年かかってもいいから大学だけは絶対に卒業しろ。あきらめるな』
息子は、父親の様なexpat になる気もないし、オットも長男には向いていないと思っている。息子はもっと人と関わる仕事に付きたいし、それはそれで何の問題もない。オットが言いたいのは、仕事をポンポン変えるような人になって欲しくないという事。
以前、息子から面白い話を聞かされた。
ある日、長男は今のウェイターのバイトがしんどくなり、マネージャーにたんか切って辞めてきてしまった。しかしその夜、夢に父親が出てきて«なんで辞めたんだ!»と喝を入れられた。(実に笑える)«Screwed!I got it!/クソ、わかったよ!» ってことで、次の日直ぐにまたマネージャーのところにいき、昨日の話を撤回してもらったそうだ。
バイト自体は大したことはしていないのだが、チェーン店で、実家近くのコミカレに通っていた時からのバイト先のマネージャーが、引っ越し先の大学近くのチェーン店にわざわざ電話して彼を紹介してくれた経緯がある。結局彼はいまでもそこでバイトしていて、雪が降って他のバイト達が誰もお店に駆けつけられない時も息子が行って店を開けたりと、あんたがマネージャー?って事をしている。彼はバイトの仕切りだけではなく、厨房のメキシカンのコックさん達とも仲がいいので、いつもマネージャーに内緒で、お持ち帰りの特別弁当をもらって帰宅するらしい。
もう一つあった。
『今さ、クラスのプロジェクトでリーダーやってるんだけど、いい加減な子供たち(あんたもでしょ?)が多くてなかなか仕事がそろわないんだ。ムカついてぶん殴ってやりたくなる時もある。なんでこいつらと仕事しなくちゃいけないんだって、しょっちゅう思う。で、パパの顔が浮かんだんだ。あぁ、パパって、こんな事が毎日あるんだろうなって。よく20年以上も同じ仕事してるよ、すごいなって思うよ』
これは、ある時フッと私に漏らした事だけど、お父さんに伝えてあげたらウンウンてうなずいて聞いてた。俺もまんざらじゃないなって思ったのかな?オットもそうだけど、長男も家ではぼそっとしかモノをいわないから、おしゃべりの次男と違ってなかなか会話が進まないんだな。
まぁ、延々続くと思われた彼の学生生活もやっと終わりそうだ。終わりが近づきだして『大学院に行ってもいいかな』とか言い出した時はびっくりしたけど、今はとりあえず卒業して、一息つきたいそうだ。
まだまだ25歳だしね。今のうちにいろいろと経験したらいいんだよ。
