娘への試練 | sunset diary

娘への試練

来週から始まるインターンシップ(研修)に向け、娘は雨降りの寒いベルリンに昨日到着した。

彼女は将来設計がしっかりできていて、それにむけて現在大学でトリプルメジャー(3学科)をとっている。長男なんて1学科でも大変だってのに、3つもとってご苦労だとつくづく思う。

3つといっても、実際は母国語のドイツ語も入っているので、これはおまけのようなものである。入学した時からドイツ語は教授が斡旋してくれたドイツ企業のウェブサイトの翻訳のバイトもしているくらいで、語学に身を助けてもらっている。

そして、去年のいつごろからか『君が夏にインターンシップをしたいなら、推薦してあげるから申し出なさい』と言われ、去年の暮れにはすでにあちこちから声が掛かっていた。主にドイツ語圏にある語学学校からだった。ドイツ、オーストリア、そしてスイスにあるゲーテなどだった。が、これらはどれも6週間単位のオファーで、娘はどこへ対しても返事を渋っていた。

すると、年末ぎりぎりになって、娘が採っている3つのメジャーすべてに関連した機関からオファーが入った。しかも、3か月みっちり!給料はどこも最低賃金の640ユーロ($800弱)だが、これは研修生の相場だから問題ない。アメリカでは無収入の研修も多いらしいから、娘はもらえるだけありがたい。即スカイプで面接し、年明けにはここでの研修がすんなり決まってしまった。

彼女の場合、成績がいいのもさることながら、

1)欧州のパスポート保持者であること(ビザの一切の手続きがいらない)
2)英独バイリンガル

というのが理由であちこちから声が掛かったんだと思う。が、研修先がすんなり決まったものの、住む場所は自分で探すようにとこの職場からいろいろなリンク先がおくられてきたのだった。

研修は約半年先だしまだ時間があると思い、まずは自分たちのベルリンの知り合いに声をかけた。が、彼らの多くはベルリンとはいっても郊外で車の生活をしているから、娘の職場へのアクセスがかなり悪く、これらは却下となった。

次は夫のドイツの会社へアプローチ。

が、あちらは最低1年レンタル、しかもアパートの部屋丸ごとレンタルするので高いのだ。娘はシェアを望んでいるし、またそれで十分なので、これも予算オーバーということで却下。

ということで、あらゆるWGサイト(ルームシェア専門サイト)に登録し、地道に次々とメールで送られててくる物件に片っ端から電話やメールを送る日々が続いていた。これでもなかなか見つからない。理由は、

1)こちらの電話番号がアメリカからだから、あちらが真剣にとってくれない(留守電にメッセージを残しても返事がきたためしがない)
2)ドイツ人は個人情報のやりとりに世界一慎重な国民だから、とくに支払いなどの手続きはSHUFAなどが関与してなかなか進まない。アメリカからのアプローチを拒むのだ。

部屋探しのピークは娘が2週間前に実家に戻ってきてから。娘と私たち親との『部屋探しの重要さの温度差』がかなり違ってジレンマが辛くなってきた。私はストレスというものはめったに感じないが、20にもなった娘が「ベルリンに3か月行きます。でもいまだに住む場所が決まっていません』っていうのを真剣に受け止めないことが理解ができず、本人がぐずぐずしているのが許せなかったのだ。というのも、娘はソロリティのプレジデントとかいうのに時間をとられて、年中ほかの大学のメンバーとスカイプミーティングしていたり、いつもケイタイでTextばっかりしていたりと、私ばかりが焦っているのがばからしくなってきたのだ。(このソロリティ、いまだに私と夫はばからしいと思っている)

そして、もっとあきれることに、娘はベルリンへ行く前の週になんと、ニュールンベルグの友達のところへ1週間ほど滞在すると言い張っていたのだ。『宿が決まっているんならそれもわかるけど、今回は遊びに行くんじゃなくてミッションがあるんでしょ?先にベルリン入りして宿探しなんじゃないの?』と私がいくら言い張ってもがんとして自分の考えを曲げない娘に嫌気がさしてきてイライラした。

親なんてやってられないって思った。

もうどうにでもしろ!と思ったのが週末。と、ここで今まで一言も娘に言わなかった父親が登場。しかも、かなり大声で叱咤した。すると、娘は堪忍してベルリンへ先に行くことを納得し、すぐにネットで安いホテルを2泊取った。

めったに声をあらげない夫の勝ちだ。

娘はだんだんと怖くなっていたのかもしれない。高をくくっていた部屋探しが実は難儀だというのがひしひしとわかってきて、でも友達にも会いたい。彼女たちにも断りにくいし、でも部屋は見つからない、誰か私にどうすればいいのか決めて!って思っていたのかもしれない。父親にどんとおされてやっと決心がついたように見えた。

娘ちゃんの試練の始まりだ。