アンネの遺した言葉(1)
「勇気を持ちましょう!ユダヤ人としての使命を常に自覚し、
愚痴は言いますまい。解決の時は必ずきます。神様は決して
私たちユダヤ人を見捨てられたことはないのでしょう。多くの時代を超えて、
ユダヤ人は生き延びてきました。その間ずっと苦しんでこなくてはなりません
でしたが、同時にそれによって強くなることも覚えました。弱いものは狙われます。
けれども強いものは生き残り、けっして負けることはないのです!
(中略)・・・もしも神様の思し召しで生きることが許されるなら、
つまらない一生で終わりはしません。きっと世の中のため、人類のために働いてみせます。
そして今、私は考えます―そのためには、なによりもまず勇気と、
そして明朗な精神とが必要だと!」
【1944年4月11日(火)】
「愛情、一体愛情とは何でしょう。私の信ずる愛情とは、本当の意味で
言葉に言い表すことは出来ない何かです。愛情とは、相手を理解すること、
相手を気遣うこと、良きにつけ、悪しきにつけ、それを相手と分かち合うことです。
そして長い目でみた場合、なにかを受け取ります。たとえ結婚して
いようと、あるいは子供があろうと、そんなことは問題ではありません。
たとえ純潔を失っていたとしても、もしもだれかがそばにいてくれて、
死ぬまで自分を理解してくれる限りは―他の誰との共有でもない、
自分ひとりの誰かがいてくれると分かっている限りは、そんなことはちっとも
問題ではないのです。」
【1944年3月2日(木)】
(『アンネの日記 増補新訂版』深町真理子訳)