ONCE MAGIMAGI -31ページ目

第十一話 未来・書き換えられる存在

「来たか」

「あいつは……」

その場に立っている人は、3人。

優希。

無骨な風体の巨人。

そして、金髪の男。

金髪の男は優希にそっくりだった。

たぶん、身長が優希よりわずかに大きいぐらいで、あとは、黒髪にすると全く区別がつかないだろう。

「あの金髪…存在が不安定だな」

眼鏡ニアの分析だ。

「?どういうこと?」

「分からん、私も始めて見る」

金髪が声を発した。

「ゲームを提供しよう」

「ゲーム?」

相手の心理が見えない。

何が目的で何をしたい?

「気にするなぶっ飛ばせ」

「いや、無傷で済むならそっちにに乗る」

「いい心がけだ」

金髪が横に動いた。誰かが屈んでいる。

「愛ちゃん!!!」

その声に愛子は反応しない。

気を失っているようだ。

「人質だ」

「俺に指一本でも触れられたら返してやる」

「それがゲームか」

ニヤリと金髪がほほ笑む。

「物分かりがいいな。そうゲームだ」

言葉を続ける。

「もちろん障害はある。この男、地が邪魔をする」

「それだけではないだろう、何か罠があるぞ」眼鏡ニア。

「まあ推測するのは自由だ。伸るか反るか?」

迷いはなかった。

彼女、愛子が無傷で済むなら、なんでもやる。

「のる!」

「来い!」

いきなり地面が崩れ出す。

優希が片膝をついた。

「こんな足場じゃ立ってもられない」

一息。

「から飛ぶ」

瞬間移動。

金髪の背後に立つ。

「終わりだ返して―――」

伸ばした手が金髪をすり抜けた。

「―――え?」

「地、上げろ」

大きな音がして金髪と地の足場が、大きく伸びあがる。

気付けば愛子も遠くに大地の隆起で運ばれていた。

あそこにいれば、とりあえずこのゲームに巻き込まれない。

「くく、そんなに簡単に触れられると思ったか」

「これは?」

「分からんがこれが存在が不安定ということだろう」

「何者?」

「分からぬでいい、全殺しだ。くらって死ね」

上から、雨のように針が降り注ぐ。

「かわせな…」「変われ」

ニアが一瞬で表に出る。

「燃えて融けろ!」

炎が針を融かす。

雨が凍って針になっていたようだ。

「ほう、変身か」

ばれてる。

「掛け値なしだ、今度こそ実力であっちが上だ」

そんな……あいつ何者?

「おい!お前何者だ」

直だなぁ。

「知りたいか?」

「存在が不安定、魔力は大きい、後、優希に顔がそっくりだな。全然わかんねぇ」

自分のご先祖様が幽霊として現れた。

そんな答えが頭をよぎる。

それなら良かった。のちに考えると、つくづくそう思った。

しかし答えは、まったく逆だった。

「未来人さ」

ニアがはっとした表情になる。

「そうか…いや、だとすると……これは…」

何々?全然わからない。

「可能性…だ」

でもでも触れかた分からないよう。

「あ、それは最初から問題ない」

…?

「プロパティ、だ」

うん。

プロパティを書き換え、優希に戻る。

「―――ア、じゃなくて………まぁいいか」

眼鏡になったニアが、言葉をつづけた。

「プロパティの書き換えは一部の神、いわゆる主属神にだけ許された能力だ。それ以外の神を従属神って呼ぶ。これは定義だ。ちなみに不正にプロパティの書き換えが出来るようになった従属神を悪魔って呼ぶ」

優希は驚いていた。

「それを何で自分ができるのかって顔してるな。だからお前は特別なんだ。神でもない人間が、そんな能力を持っている。これは史上、前にも後にもない、お前だけの能力だ」

「なんでボク?」

「さぁ?それは分からない、まさに神のみぞ知る、だ。あ、ここでいう神って主属神な」

「ぼーっとするな」

火の球が脇をかすめた。

「避けながら聞け」

「うん」

火の球は連続した。

そんな速度でもないので、かわすのに苦労はなかった。

「プロパティの書き換え、あれは魔法以上に何でもありの能力だ」

「その気になれば、世界を滅ぼすことも、創造することも可能だ。しかも効果範囲は無限。DDSフィールドなんて必要もない」

「つまり?」

「その能力であいつに触れられるようにする」

「出来るの?」

「やってみなくちゃ分かんねえ」

「やるか?」

「やる」

プロパティの書き換えは、感覚でわかる。

魔法と違って、何も考えなくても、何もしなくても書き換えられる。

頭で思うだけだ。

そして、金髪の存在を書き換えた。

「?」

「DDSフィールド展開、くらえ光弾」

金髪の足場を崩す。

「っ」

落ちてきた金髪の顔を思いっきりぶんなぐる。

金髪は吹っ飛んだ。

「触れたよ」

「っ???なぜ、俺の存在が…」

「番長っ!」

地が動いた。

優希の周りの土が盛り上がる。

それが刃となって、優希を襲う。

しかし、それが優希を貫くことはなかった。

「間に合ったか」

地が崩れ落ちる。

腹に光弾を受けたのか、焦げ跡があった。

「会長!」

「番長、決着と行こうか」

静かに顔を伏せていた金髪が、思い出したように、燃えあがるように言葉を発した。

「痛い、痛い、痛いぞぉっ」

番長の魔力が膨れ上がる。

とてつもない量だ。

「殴るのは、やりすぎだったかもな。ぶっ飛ばさないと止まらねぇな、こりゃ」

「もう触れられるんでしょう。ならば問題はない」

「終幕だ」

雨は、ロウソクのように最後に大きく燃え上がろうとしていた。

大雨が三人をつつんだ。

優希の言葉が、すべてを表現している。

終局面だ。


対立