落語噺「花見酒」のあらすじは、酒好きの辰さんと熊さんが花見に行くことになったが、ついでに花見客に1杯10銭で酒を売って一儲けしようとする話。酒樽を担いで花見会場に行く途中、酒の匂いを嗅いで我慢ができなくなった熊さん。「誰に売っても同じ」と辰さんに10銭渡して一杯飲み干す。これを見た辰さんも我慢が出来なくなって熊さんに10銭渡して一杯飲み干す。こうなると止まらない、一杯がもう一杯と繰り返していくうちに酒樽が空になってしまった。全部売れたと喜んでいても残ったのは元銭の10銭が残っただけという噺。
国の経済が発展していく過程で金融業の比重が高まっていくのは万国共通。資本集約型の産業はピンからキリまであるが、例えばアメリカのヘッジファンドが為替差を使った円キャリー取引や、我々一般市民が株取引などで利ザヤを稼いだりしている。金をグルグルまわすことで株の値を上げたり、不動産の値を上げて利ザヤを上げることは出来る。しかし誰かの得は誰かの損と付加価値を上げている訳ではない。仮に付加価値であると強弁しても、同じモノの交換価値が上がっただけで富を築いていることにはならない。
金がグルグルまわっているうちは見せかけの繁栄にひたっていられるが、バブルがしぼんでしまえば酒樽が空っぽになる「花見酒の経済」そのものである。