実は 「サイジング」を始めたのは 48年前からでした。
なぜ始めたのかというと インターンになると同時に 店長になってしまったからです。そうです。免許も持っていない私が 何意を血迷ったのか?社長の原田先生からの命令があったのです。
驚くと同時に 「この人は何を血迷っているのだろうか?」と思いました。「免許もない私になぜ?」という疑問が頭の中を駆け巡りました。
と言いますのは 実は インターンが終わり、免許を取ったら 「美容師をやめよう!」と固く決めていたからです。当時の仕事環境は 最悪でした。始業時間は 9時なので 8時半までに出社。終業は 夜の9時まで。おまけに通勤時間に約1時間半かかるのです。朝6時50分に家を出て 帰ってくるのは 夜10時半です。この仕事環境の中では練習時間などないのです。どうがんばっても3年が限度でした。
だから 強く断ることにしましたが、粘り強く説得され、仕方なく受けることにしました。とにかく1年経ったら辞めるのだから 「思いっきり失敗させてもらおう!」と決めたのです。
開店は10月でした。何もわからない自分が 店長になった意味も解らず始めたのは 1月の成人式があるので、まずアップスタイルの練習を始めなければなりませんでした。自分以外は もちろん見習いばかりです。3人の部下を 見習いの店長が弾き連れて行くのです。
この環境どう思いますか?
部下が失敗しても 見習い店長であるから 怒る訳にはいかないのです。部下が失敗してもすべては自分の責任になるのです。腹を立てる訳にはいかないのです。腹を立ててしまえば 労働効率が下がるのです。
この頃から 私は トップに立つことが嫌いになりました。トップなんて責任ばかりかかって 気苦労の連続なのです。
実は 1年ほど前から 店の近くに引っ越したのです。とにかく免許を取って辞めるためには 3年で一人前になる決心をしたからでした。
そんな中で 「似合う」髪型にするには どうするべきかを考えたのです。その時頭に浮かんだのが、サイズを合わせることでした。セット技術は 簡単に髪型の大きさを変えることが出来るのです。
このことをきっかけにして 髪型サイズを合わせることにしました。
このサイジングを始めると 失敗がなくなるし、やり直しがきくのです。やり直しをするたびに 失敗の原因がわかるようになり、営業力が伸びると同時に 技術力が身につくようになったのです。
この頃の私は 「サイズ合わせ」の方法を学ぶことが出来なかったことを残念に思い、どこかで「サイズ合わせの方法」を教えてくれないかと探していました。
自分は 基本通りにしてもできない未熟な技術者なのだとお落ち込むようになりましたが、どっちみち、辞めるのだからどうでもいいやと思い、自分の思う方法でサイズ合わせをするようにしたのです。
サイズ合わせを始めると 自分の採寸結果が大きく間違っていることに気づきました。
この頃から 自分の脳がおかしいのではないかと思い始めました。説明通りにしても思い通りの仕上がりにならないのです。ほかの人たちは 何の疑問も抱かず練習しているのに、自分は 説明通りにしても絶対に思い通りの仕上がりを創ることが出来なかったのです。
「辞める」という言葉が救いになりました。とにかく「失敗」がテーマの毎日になりました。
しかし、「失敗」というのは 私に大きな成果をもたらしました。「失敗」ごとに 「学び」があったのです。
この頃から 直径×3,14を使って 採寸結果を修正するようになったのです。
そして 半年たった頃、インターンの集中講義が一か月間始まりました。その時、友達が 『俺の先生は凄いんだぞ!この前の日曜日は 一日に32人もカットしたんだぞ!」と自慢げに言いました。そして私も 「先週一日に31人カットしたよ。」と言ってしまいました。実際に一日、31人こなしたのです。終業時間は 7時までなのですが、10時ぐらいまでかかってこなしたのです。
ところが この発言をした後、周りの空気が俄然悪くなったのです。まるで嘘つき化ほら吹きを見るような目で 軽蔑のまなざしを受けたのです。
実は 私は 店長が一日にどれぐらいこなすのが普通なのかを知らなかったのです。とにかく来たお客様をこなすことに必死で 結果が良いのか悪いのかがわからなかったのです。
一年後 テレビを見ていたら、カットコンテストで優勝した人がインタビューに答えていました。アナウンサーがその人に、一日どのぐらいお客様をこなしますか?という問いに 「そうですね。一日10人ぐらいが限度でしょうか?」と答えていたのです。
この答えを聞いて 周囲の人たちが軽蔑のまなざしを向けたのは こういう意味があったのかと納得しました。
朝9時から夜九時までの営業時間に身を置かれたり、インターンになると同時に店長になることは 自分にとっては 「不幸」や「苦難」と思えるようなことが 実は 大きなチャンスだったことに気づかされたのです。桁外れな幸運に恵まれていたことだったのです。