こんばんは。

大好きな安城市の在宅医療に貢献したい!

日だまり訪問看護ステーション

看護師 山田万理です。

 

「こんな歴史的瞬間に

山田さんが隣にいてくれて嬉しい

このWBCが私の人生最後だからね」

WBC決勝戦で

日本の勝ちが決まった瞬間

Mさんが言いました。

 

 

 

 

7回裏からMさんとWBC観戦していました。

病院に勤めていたら

仕事中に野球観戦なんて考えられないこと。

 

Mさんは乳がん末期で

精神障がい者のお孫さんと二人暮らし。

10年前に娘さんが自死してからずっと

2人で暮らしてきました。

生活保護受給者でもあります。

 

腰痛がひどくて受診したら

Mさんが思っていたヘルニアでも

脊柱管狭窄症でもなく

乳がんの骨転移と診断されました。

 

すでに手術適応ではありません。

 

孫のために長生きしたい

孫に介護させてまで長生きしたくない

お金のこと、どうしよう・・・

 

考え抜いた結果

ホルモン療法を選びました。

抗癌剤よりは副作用が少ないのと

通院回数が少ないから。

 

ホルモン療法を開始したものの

治療回数を重ねるうちに

右半身の例えようのないだるさや

腕が上がらないことで

家事どころかトイレに行くことすら

困難になりました。

症状が軽くなったと思うと

次の治療の日が迫ってきます。

 

12月は緊急コールが続きました。

・息苦しい、息が吸えない 

・咳が止まらない

・仰向けで寝られない

・足が異様に浮腫んでる

・血圧が180越えした

これらは心不全の症状で

ホルモン療法の副作用と思われます。

 

主治医はMさんの生活背景を把握していて

入院治療を避けるために

外来で胸水を600ml抜きました。

もっと溜まっていたけど

これ以上抜くと帰宅途中に

ショック状態になるかもしれないので

時間をかけて抜くために

利尿剤が処方されました。

 

帰宅して当日は楽になったものの

苦しいのが続くので

入院することになりました。

 

お孫さんが1人で生活できるか不安で

入院を避けてきたけど

Mさんが、ご飯を炊くこと

味噌汁を作ること

炒め物料理を教えていたので

食べることには困らなかったらしいです。

掃除がされず家中とっ散らかって

洗濯物はてんこ盛りだったそうですが。

 

この入院を機にMさんは

ホルモン療法も受けないことを決めました。

今は腰痛に対して解熱鎮痛薬

心不全、血圧コントロールのために

利尿剤を内服しているだけです。

 

 

 

 

 

Mさんの病状は無治療なら

長くて余命1年と言われています。

 

健康な私に訪れる

正月、桜の開花、誕生日、花火大会

お月見、紅葉、クリスマスは

余命宣告された人には

『人生最後の』という言葉が頭につきます。

 

余命1年のMさんには

3年後のWBCはありません。

 

 

あなたが何気なく過ごした今日は

昨日星になった人が

何としても生きたかった明日なのです

 

この言葉に10年くらい前に出会ってから

生かされていることを真摯に受け止めて

精一杯生きなければいけないと

責任のようなものを勝手に背負いました。

 

だから

適応障害からうつ状態になったとき

明日の命さえ危ぶまれて

懸命に今を生きている人がいるのに

薬を飲んで一日中眠って過ごすことが

無責任に思えて苦しかったし

消えてなくなる勇気もないから

生きていることがつらかった。

 

でも考えてみれば、

昨日星になった人の分まで

頑張って悔いなく生きようなんて

無理な話なんだ。

昨日星になった人が

世界中にどれだけいる?

そもそも、昨日星になった人が

自分の分まで生きて欲しいと

私にお願いしたんだっけ?

 

私は優しい世界に生きていて

ありがたいことに

私を守ってくれて

回復させてくれる人がいた。

 

だから

肩の力を抜いて楽しんで

自分のために生きよう

私が幸せに過ごして回りにいる人に

幸せのおすそ分けをしよう

って考えが変わった。

 

今は毎日が楽しくて

利用者さんとご家族の幸せはなんだろうと

いつも考えている。

 

 

 

 

 

Mさんにとって

部屋に引きこもりのお孫さんに代わり

私と横並びでWBC観戦して

勝利の瞬間にハイタッチしたことは

幸せだったと思う。

 

Mさんも私も野球に詳しくありません。

なのにWBCに夢中になりました。

 

9回で大谷投手がフォアボールで

1塁に走者を出した時

「きっと作戦だよね

大谷選手も敬遠されてたしさ」

「あんなスピードでフルスイングされたら

ホームランになったかもしれんし

点取られんで良かったよね」

なんてウンチク語ったり

 

「やばい、打たれた~

ゲッツーだ、日本スゴイ!!」

キャーキャー騒いで

 

「あと1つ、頼む、大谷頑張れ」

2人で手を組んで祈りながら

固唾を飲んで見守って

勝利の瞬間に涙流してハイタッチした。

 

途中で今までの試合で感動した場面を

振り返ったら

Mさんは

「メキシコ戦で村神様が打った瞬間に

涙が止まらなかったよ~」

と言いました。

 

監督とメンバーが仲間を信じてることや

不振に苦しみながらも克服して

さよならタイムリーを打ったことが

涙が出るほど嬉しかったそうです。

 

お孫さんに感動を伝えても

ふ~んってつれない態度だったそうで

山田さんに話せて嬉しいって

喜んでもらえました。

 

私はイタリア戦で

大谷選手がバントを打ったことでした。

イタリアの監督が

試合直後のインタビューで

大谷がバント打った?

あれ、大谷だったよね?と

まだ信じられない顔してたのが

印象的だった。

 

大谷選手がインタビューで

リスクを回避しながら

ハイリターンを望めるチョイスをした

日本代表のチームの勝利より

優先する自分のプライドはなかった

と話したのを知って鳥肌が立った。

先読みする力があって謙虚で

人間性がスゴイ。

 

トラウト選手を抑えた投球ついて

問われた時に

自分も(エンゼルス)チームメイトも

彼の凄さ、人間性も含めて

どれだけ素晴らしいか知っているので

自分のベストを超えるような球を投げないと

なかなか抑えられない

バッターじゃないかと思って

そういう気持ちで行きました

と答えていた。

 

最高の敬意を払いつつ

真っ向勝負する強さがあって

カッコいいキラキラ

 

それにしても侍ジャパンとは

よく言ったものだと思う。

バットとグローブを武器にして

長(栗山監督)に仕える侍たち。

 

メンバーひとりひとりと対話して

信頼関係を築く栗山監督の統率力や

メンバーを鼓舞して引っ張る

大谷選手のけん引力や

栗山監督を世界一の監督にする

胴上げするのが目標という選手がいて

忠誠心を感じたし

自分の持つスキルすべてを

教えることにデメリットはないという

最年長のダルビッシュ投手の指導力。

 

 

 

 

 

WBCはたくさんの感動があった。

夢を与える戦いってあるんだな。

 

私の幼稚園の卒園アルバム

小学校の卒業アルバムに書かれている

男子の将来の夢には

野球選手、サッカー選手

弁護士とかが多かったけど、

今はユーチューバーや会社員が多いらしい。

 

きっとこれから

野球選手って書く子供が

増えるんじゃないかな。

 

自分の使命を楽しんで

それが人に夢を与えるなら素晴らしいこと。

そういう人になりたい。

 

昨年、

看護師になりたいと言ってるけど

本当はアイドルになりたい

という小学生に会いました。

 

じゃあ、どっちもなればいいじゃん!

って言ったら驚いていた。

無理だと決めつけずに

夢を与える大人でいたい。

   

 

 

 

私のブログが大人にも夢を与えたようです。

 

いつか山田さんのような

看護師になりたいと思ってきましたと

読者さんがメッセージをくれました。

とても光栄に思います。

 

子育てと家事を両立させて

看護学校に通い

国家試験に合格したすー。さん。

おめでとうございます!!

3年間粘り強く、諦めずに

看護学校に通ったすー。さんの頑張りは

侍ジャパンにひけをとらないのでは?

モチベーションを保つのが

大変だったと思います。

本当にお疲れ様でした。

看護師人生を楽しんでくださいね。

 

 

3年後WBCを観戦するとき

Mさんとハイタッチして

優勝を喜んだ瞬間や

野球に詳しくない2人が

ウンチクを語った時間を

思い出すだろう。

 

死はすべての終わりではなく

誰かの心にすみついて

記憶に残るためのはじまりの日。

 

看護師の私は

余命宣告された人の

残された命の時間に寄り添って

色をつけることだと思う。

一緒に幸せ探しをすること。

そのためには

心と体の痛みを和らげることが最優先。

 

つらい症状があるときに

やりたいことはなんですか?

あなたの幸せはなんですか?

そんなこと聞かれたら

私だったらブチ切れる。

 

今、一番不快な症状はなんですか?

話したら楽になる気持ちがあれば

聞かせて頂けませんか?

 

五感をフル活動させて観察して

先入観を持たずに

まっさらな心で話を聴く。

 

自分の価値観も大切にしながら

相手の苦しみの理解に努めて

和らげる方法を一緒に考える。

そのためには専門的な知識が必須。

だから学び続けることが大切。

 

苦痛緩和してから

もしくは

苦痛緩和されていることを

確認してから

やりたいことは何ですか?

叶えたい願いがありますか?と

聞くことができる。

 

ホルモン療法中止の決断をしたMさんは

副作用の苦痛から解放されて

昼間はレース編みをして

家事を休み休みして

穏やかに過ごしています。

 

Mさんの人生最後の歴史的瞬間を

一緒に過ごせて幸せです。

 

 

 

久しぶりにブログを書いたら

とりとめなくなってしまったので

今日はこの辺で。

最後までお読み頂き

ありがとうございました。