意味のない「強制的親切」 | Mrs.Waywardのひとりごと

Mrs.Waywardのひとりごと

アメリカ暮らしの中で体験すること、感じること。

昨日の午前中、誰ががドアをノックした。
ドアを開けると、近所に住むエヴリンが立っていた。

エヴリンは、裕福で大きな家に住む専業主婦で、
この辺の奥さん方のリーダー的な存在の人だ。

 

挨拶を交わすと、彼女は切り出した。
うちの近くに他州から新しい一家が越して来たとのこと。
ただ、ご主人はまだ他州に居て、奥さんと3人の息子達
だけが先に引っ越して来てその家に住んでるらしい。

 

越してきたその奥さんというのが、エヴリンによれば、
かなり重度の鬱病や不安症を抱えている。
OCD (強迫神経症) などもあるとか。

そのため、あまり外に出てこないし、
車も今は免許が切れていて運転出来ない。
外に出てこないので、当然まだ知り合いも友達もいない。

 

エヴリンが言うには(彼女はこの奥さんを
買い物に連れて行ったりしてあげているらしいので、

ちょろちょろ情報が入っている)
今日は、末の男の子の5才の誕生日らしい。

 

そして、彼女から、うちの息子(6才)は年も近いし、
お誕生日おめでとうのカードか何かを届けてあげられない
かしら?というお願いをされた。

 

・・・一つ前の記事にも書いたけれど、
私も調子がいい時なら、そういったことも出来ない訳でもない。

皆いろいろあるし、助けるのはお互いさまだ。
でも今はそれどころじゃなくて、自分自身ストレスが溜まっている。
夫の引っ越し先のアパート探しや引っ越しの準備、
他にもいろいろ、いろいろ、この引っ越しに係ることで
やらなきゃいけないことがあるのだ。

 

しかしエヴリンには、この引っ越しのことはまだ言えない。
夫の仕事上の関係でいろいろややこしいことがあり、
夫が出発する前には誰にも言えない、言いたくない、
という事情がある。

 

それに、だ。
ウツや不安症を抱えた人が、
知らない人が子供連れて訪ねて来たりして、
ああ、うれしい~!と思うわけがない。

私も、Anxietyがあるのでよ~くわかる。


正直、知らない人、しかも、重度のウツの人の所へ
親切ヅラして挨拶に行くなど、私だって
Anxietyレベルが上昇してしまう。

 

それでなくとも、この近所に住む
息子の年齢の男の子達というのが、
いろいろと訳アリな家庭の子が多く、
専業主婦でヒマそうに見える(?)私は、

ていのいい子守にされてしまうことがよくある。

 

そんな経験から、ああ、もし私の方からアプローチする
形になるなら、「何か出来ることがあったら言ってね」
なんて言おうものなら、「あ、じゃ、息子みてくれないかしら」
なんてなるんじゃないだろうか・・・。

 

と、先走りして不安が脳内を駆け巡る。
これからの3か月は、私と子供達が引っ越すまで、

嵐のように忙しい日々が待っているのだから、

正直に言うと、いつも子供を預けられても困るのだ。

というか、私の手をさほど煩わせない娘の友達たちが

遊びに来ることすら面倒だと思っているのに!

 

エヴリンの止まらない話を聞く振りをしながら、

私の頭の中は被害妄想で一杯になっていた。

まだ、子守を頼まれるなんて決まってもないのに。

今は特にストレスが溜まっていてポジティブ思考に

なれず、ネガティブの塊のような自分。

他人に対する親切心など也をひそめている。

 

やんわりと、ほら、あそこのお家にも、小さい男の子、

いるじゃない?なんて矛先を変えようとトライしたが、

エヴリンは、「あ、そうよね~、そうよね~、でも、今回は、

エリ達がカード持って行ってくれないかしら?

絶対喜ぶと思うわ!あ、もしね、そっけなくされても、

それはほら、彼女、いろいろイシューがあるせいだから、

気にしないでね!」と来たもんだ。

 

プラス、彼女曰く、その小さな男の子というのが、

多分ちょっとディレイがあるらしい。あまり話さないのだとか。

もし預けられたら私ちゃんとハンドルできるだろうか。

 

「あのさぁ、助けたくないとかそういうことじゃないんだけど

(嘘ばっか)ウツとか抱えてるなら、他人が急に訪ねて来たりしたら

あんまりうれしくないと思うけど、行っても平気だと思う?」

とも言ってみたりしたが、エヴリンがあまりにもバックダウン

してくれないので、仕方なく承諾した。

 

そう、「仕方なく」だ。

なんて不親切な女だろう。

ちょっと大げさだけど、最近は、私の中の

"GOOD"と "EVIL"がよく戦っている。

別に悪いことしようとしてる「悪」ではなく、

他人に優しくなれない、思いやりに欠けた

自分勝手な自分だ。

 

だけどね、私の不安症も本当は重度なのよ、エヴリン。

知らない人に話するなんてことはストレスなの。

 

去年あたりから、それまで断ることが出来ないがために

続けていたボランティア的活動を一切断るようになった。

かなり強気で断らないと、ズルズルと引きずられて、

イヤイヤながらやっている自分がいた。

 

ボランティアだの、親切な行いだの、その本人の

本当の奉仕の気持ちや親切心から来るのでなければ

意味がないのだ。イヤイヤながらやっている自分に嫌気

がさしていた。

 

去年一度、エヴリンにガツンと言って、あるボランティアを

断ったことがあった。しかしその後も時々私の様子を見に

来たり、テキストを送ってくれたりすることに感謝してるから、

今回は彼女の顔を立てるようなつもりで、承諾した。

 

お菓子やシャボン玉などを用意し、ギフトバッグに入れ、

カードを買って息子にメッセージを書かせ、

ドアに出てこないことを想定して、大き目の付箋に

簡単なメッセージを書いた。そうでないと、いきなり

知らない人からのお菓子なんて、気味が悪くて

食べられないだろうと思ったから。

 

こんにちは!

 

エヴリンからあなたたち家族近所に引っ越して来たと

聞いたので、挨拶したいと思いました。

今日は息子さんの誕生日なんですよね?

彼が楽しい1日を過ごせますように!

 

エリ・ウェイワード

 

私は故意に電話番号を記さなかった。

本当は友達になるはずなどない

(だって引っ越してしまうから)のに

こんなメッセージ書いて親切めかして

訪ねて行くことに罪悪感を感じた。

 

息子とその家に行ってみると、車はドライブウェイに

止まっているが、家じゅうのブラインドは全てキッチリと

下りている。外の世界を遮断したいのが手に取るようだ。

 

家に居るだろうとは思ったが、出てこないだろうと確信は

していた。案の定、ドアを叩くもドアベルを鳴らすも、

誰も出てこない。

 

エヴリンはめちゃくちゃにポジティブで押しが強いタイプだ。

だから、こういう人(ウツ、アングザエティ持ち)の気持ちは

多分解らない。知らない人の急な訪問など、迷惑以外の

何ものでもないのだ。

 

予想通り出てこなかったので、用意していた付箋を

カードの封筒に貼り、それとお菓子の入ったギフトバッグを

ポーチに置いてきた。チョコレートが溶けてしまわないように、

ドアの前にバッグが置いてあることをその奥さんに伝えてくれる

ようにエヴリンにテキストする。

 

すぐにエヴリンから返事。

「ありがとうね!あなたのしてくれたこと、

とってもスイートだわ。彼女にテキストしたら、

ありがとうって言ってたわ!」

 

ほらね、やっぱり家に居たでしょう。

それに、「あなたのしたこと、スイートだわ!」

って、これってほぼ強制的でしょうが。

 

少なくとも、誕生日を迎えた男の子だけは、

素直に喜んでくれたと思う。

不毛な、うわべだけの親切行為だったとしても

それだけは救いだ。

 

夫にこの出来事を説明したら、

「運転免許、切れてるんじゃなくて、免停じゃない?

多分。取り上げられてて運転できないんだろ。」

 

確かにそんな気もしないでもない。

私も過去にうっかりしていて免許証が切れて

6か月も経ってしまったことがあったが、

ドキドキしながら行ったのに、DMVで何の問題も、

質問もなく、更新してもらった経験がある。

 

運転出来ない奥さんと小学校に通う年齢の3人の子供

だけ先に引っ越させて、旦那さんがまだ他州で仕事

(理由はそこでの仕事のほうがもっとお金が稼げる

から、とエヴリンは言っていた)している状況というのも

おかしな話だ。

 

普通の家庭の場合、遠くへ引っ越すのって、収入が上がる

ことがモチベーションになるはずなのだから(ウチもそう)。

しかも、アメリカだったら、車の運転が出来なければ

子供の送り迎えや、食料品の買い出しなど、何もできなくて、

生活が成り立たない。少なくともこの田舎ではそう。

 

奥さんの重度のウツや不安症。話さない子供。
きっと他人に詮索されたくない事情があるのだろう。

訳アリの引っ越しなのかもしれない。

 

生きているといろいろある。

彼女もそのいろいろを乗り越えて行けるように願う。