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セラピストは白い碁石でいるべきか?
◇
この問いが、間違っていることが、今の私にはわかる。
「べき」が間違い。
でも、少し前までの私は、「べき」や「ねばならない」の鎧をたくさん着ていた。
人はこうあるべき、女性はこうあるべき、男性はこうあるべき……。
その名残で、こんな「問い」を立ててしまう。
でも、そのあとすぐに「あ、べきじゃない。」と気が付くまでにはなった。
で、「べき」を取り去ると、「セラピストには白い碁石の人もいる。」
それも、あり。
◇
白い碁石とは何か?
カウンセラーの方に対して、私が抱いている印象。
つるん、として、真っ白で、光を反射はするけど、中は見えない。
◇
私は、それこそ、真っ白な状態で、鍼灸師になった。
他の治療院でアルバイトをした経験もなく、
かかりつけの鍼灸院・治療院があったわけでもなかった。
だから、専門学校を卒業して勤務した治療院「しか」知らない。
そして、師匠は1人だけ。
だから、私の施術者としてのお手本は、師匠しかいない。
◇
不出来な弟子だったので、真似ることができたとはとても思えない。
その中で、面と向かって言われたわけではないが、心がけていたことは、
「びっくりしない。」
いろんなことを抱えて、患者さんはやってくる。
そして、治療の過程でも、色々な状況になる。
それにいちいちびっくりするな。あわてるな。感情を表に出すな。
過酷な状況の患者さんも多かったので、
それが無理だった場面もたくさんあるけれど、
できるだけそうありたい、と思ってきた。
◇
でも、そうやって、できるだけフラットな心持でいよう、とする中でも、
地割れができて噴き出すみたいに、感情が出てしまう場面があった。
それは、患者さんが、自分を蔑んでいるとき。
自分なんて、と言って、自分を粗末に扱っているとき。
断りきれない宴会が続いて、二日酔いを3日続けて、
グダグダのカラダで現れた男性の患者さんに、
一瞬、自分のカラダが燃えたか、と思うぐらいの怒りが起こった。
もちろん、そのまま怒りをぶつけたりはしなかったけれど、
自分の感情に戸惑うぐらいだった。
過酷な働き方をしてダウンしたのに、
またすぐに働こうとした女性の患者さんにも、
怒りでとっさに返事ができなかった。
ブースを出たら、同僚にばれていて、
「何にもしゃべりませんでしたね。」と言われてしまったけれど。
◇
これからうつ改善セラピストとして活動していく中で、
私はどんなセラピストになっていくのだろうか。
白い碁石か、ひび割れた碁石か。
そもそも碁石でもないか。
それを決めるのは、患者さんだ。
鍼灸専門学校の先輩が言っていた言葉。
「セラピストはクライアントを超えることはできない。」
いつも患者さんへの敬意とともに思い出す言葉。
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