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私はなぜ鍼灸師になったか
この間、質問を受けたので、書いてみようと思う。
◇
大学の文学部史学科地理学類を卒業して、大手電機メーカーの子会社に入った。
まぁなんでもいいや、と、営業職希望で親会社を受けたら、
「君はコンピュータ関連の仕事のほうがいいね。」と面接官に言われて、
その人が部長を務める子会社に就職が決まった。
ペーパーテストなんて、そのあとに受けたぐらいだった。
だから、コンピュータに関しては、まったくの素人で、
ましてやその当時は汎用機といって、リース料が１か月１億円、
とかするコンピュータが相手だったので、
日常生活で見る、触れる、なんてものではなかった。
◇
１６進数を見たのは就職してから、なんて感じだったので、
どこまで通用するのかな？と自分でも思っていた。
そして、勘とハッタリで１４年間は、なんとかもった。
脱落の原因は、新しい考え方として導入された、オブジェクト指向。
なんのことやら、さっぱりわからない、とはこのことだった。
（辞めてから、アクセスでデータベースを作ったら、あっさり理解できた）
◇
私が１７歳の時に母がリウマチになり、二人三脚で、
病気のことを調べたり、さまざまな健康法を試したりしてきた。
そして私が３２歳の時、父が肺がんとなり、４年の闘病ののち、
脳に転移して、ホスピスで亡くなった。
父がホスピスに入っているとき、全身に蕁麻疹ができた。
たぶん、最期が迫っているんだろうな、と思っていたが、
皮膚科の先生がやってきて、
「原因は分からないな、しばらく様子をみましょう」と言って帰っていった。
仕方がないことだけれど、西洋医学って、
パーツごとにしか見られないんだな、と思った。
呼吸器内科、外科、脳神経外科、皮膚科、そしてホスピス。
患者は一人で１つなのに、医科は分野ごとにその人を診るしかない。
◇
そして、モルヒネの副作用で、父は便秘に苦しんだ。
便秘になると脳圧が上るから、下剤を処方される。
痩せた身体でトイレとベッドを往復する父をみて、
やっぱりまるごと身体を診ることができないのか、と思った。
ちょうど良い量の下剤を処方するって、そんなに難しいのかな。
そして、東洋医学なら、そんな調整もできるんじゃないのか？
と思いついてしまったのだ。
今から医者にはなれないけれど、鍼灸師なら？
◇
仕事は、全然理解できなくて、さらにはそろそろ管理職？と言われていた。
母のリウマチも少しずつ進んでいた。
大手企業に勤めていることを喜んでいた父はいない。
鍼灸師になろう、と思うのに時間はかからなかった。
◇
ＩＴ業界にいた期間と、鍼灸師でいる期間が、
専門学校時代を除くと、今年で同じになる。
収入は比べようもないぐらい、ＩＴ業界の方がよかった。
でももし、再びＩＴ業界に戻りたいか？と聞かれたら、それはＮＯ。
その診断はあっていたのか、ツボの選択は最適だったのか。
一瞬で結果の出る鍼灸が、身に合っていると思うから。
◇
実は、患者さんに感謝されるから、というのは、その次、なのだった。
カラダの声を聴いて、病の謎を解きたい。
あくまでカラダ主体。
やっぱり鍼灸師。
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