先月の10期生の授業で感じたのですが、Acon.とBell.は比較してみると、とても面白い。
Aconは、植物界最強の毒性を持つトリカブトの開花期の全草を使ってレメディを作ります。
Bell.も副交感神経を遮断してしまう猛毒を持つ植物の開花期の全草を使います。
植物分類でみると、Acon.の原料であるトリカブトは、キンポウゲ科に属します。
ホメオパシーの世界では、植物レメディの場合、どの「科」に属するのかということは、とても重要です。
それぞれの「科」ごとに共通のテーマがあり、同じ「科」に属するレメディ同士は、共通の感覚を持ちます。
Acon.が属するキンポウゲ科には、「神経むき出しの病的な過敏さ」というテーマがあります。
そして、過敏さゆえに、ショックを受けやすく、過度にイラつき、神経性の緊張を感じやすい人達です。
Acon.は、ショックのレメディですが、ベースとして、ショックを感じやすい、過敏さや緊張感をもともと持っているような人により効果を発揮します。
キンポウゲ科には、有名なレメディが並びます。
Puls.(プルサティラ/西洋翁草) Hell(へラボレス/クリスマスローズ) Cimic.(シミシフーガ/ブラック・コホシュ) Staph.(スタフィサグリア/デルフィニウム)など。
どのレメディも、敏感さからくる、不調というのが特徴的です。
私は、これらのレメディに、湿潤な気候特有の風土からくる、ウエットな、女性性~日本的なものを感じます。
Bellは、ナス科の植物です。
ナス科のテーマは、暴力、突然の、爆発性の、激しい恐怖、白と黒、窒息する、痙攣、パニック、など。
レメディの顔ぶれも、ずいぶん激しいキャラクターが並びます。
有名どころは、Stram.(ストラモニウム/チョウセンアサガオ) Hyos.(ハイオサイヤマス/ヘンベイン) Caps.(カプシカム/唐辛子) Tab.(タバクム/タバコ) Dulc.(ダルカマラ/ウッディナイトシェード)など。
これらのレメディを勉強しているとき、生徒さんたちからよく出てく印象は、「韓流ドラマ」を彷彿させるような激しさです。
Bell.には、アトロピンという自律神経を狂わせる毒性が含まれています。
私達の自律神経は、緊張モードの交感神経とリラックスモードの副交感神経でできています。
自律神経は、交感神経と副交感神経の良きバランスが保たれた状態がベストなのですが、アトロピンには、副交感神経を遮断するという作用があります。
子供たちが赤ちゃんだったとき、お乳を飲んで、少し遊ぶと手足が温かくなってきたものです。
お休みモードに入ったなと思って、昭和時代のママだった私はよくおんぶしたものです。
すると子供は、すぐ眠ってくれました。
副交感神経は、安らぎの支配する平和な世界です。
Bell.を必要とするのは、これらから切り離された世界。
戦闘態勢モード。
恐怖を感じ、緊張して、暴力的になっています。
手足は冷たく、血液は、頭と顔に集中。
マテリアメディカ“FOCUS”のBell.のページでもっとも目立つ単語は、「VIOLENT」。
この単語には、
・激しい、猛烈な、強烈な。
・狂暴な、暴力的な
・乱暴な
といった意味がありますが、すべてがBell.を表現していると言えます。
Bell.は急性症状のレメディです。症状は、急なだけでなく、激しいことが特徴的です。
痛みも、ずきずきと拍動するような感覚。
また、幻覚や譫妄からくる暴力的な行動。
殴ったり、噛んだり、蹴ったり。
瞳孔も開いて、瞳はガラスのように輝きます。
ベラドンナというのは、瞳孔を開かせ、瞳をキラキラさせるために、中世の女性たちが利用していたというところからつけられた名前でもあります。
ベラ(美しい)ドンナ(女性)。
魅力的に見えるように、点眼した女性たち。
でも、そのため命を落とす女性もいたそうです。
学名のアトロパベラドンナのアトロパというのは、ギリシャ神話で死の瞬間に運命の糸を断ち切る女神アトロポスにちなんだものです。
実の「黒さ」は、魅力的な瞳だけでなく、中世の魔女のイメージとも重なります。
クロネコを連れて、ほうきに乗って空を飛んでいた黒い衣装の魔女たち。
中世では、魔女は、占い師のような医者のような存在だったらしい。
ベラドンナは、魔女が使っていた薬草だったようです。
Bellの精神症状には、
MIND; DELUSIONS, imaginations; flying; he or she is
(精神;妄想、想像;飛行する)
といったものもあり、まるで、ほうきに乗って、空を飛ぶ魔女のようです。
Aconが、スーッとマンホールに落ちていくようなイメージだとご紹介しましたが、Bell.はこれとは逆で、何かが激しく吹きあがるようなイメージです。
夜中に、子供の体温が、ばーっと上がる。
熱性けいれんなどのとき、突然起き上がって、うわごとを言い出す。
患部の症状は、突然起き、激しく痛み、赤く腫れて、焼けるように熱い。
Acon.がSulph(サルファ)のような、頑健でふだんは高度飛行しているような人が陥りやすい状況なのに対して、Bell.はCalc.と関係性の深いレメディです。
Calc.は、牡蠣ガラを原料とするレメディ。
自分を弱い存在だと感じ、強い恐怖心を持っています。
そういったタイプの人が恐怖を体験したときに陥りやすい状況がBell.なのです。
地球の中心で燃え盛っているマグマ(成分は硫黄)を原料とするレメディ~Sulph.
海中で、静かに時間をかけて育つ牡蠣を原料とするレメディ~Calc.
ホメオパシーでは、Complemenntary Remedy(相補レメディ)といいますが、
SulphとAcon.も、 Calc.とBell.も、それぞれ相補い合う、相性のよい関係です。
また、Sulph.とCalc.も互いに相補的な関係性をもつレメディです。
ラジャン・サンカランは、SulphとCalcにLyc.を加わえて、これら3つをサークルと言っていますが、互いにとても深い関係性を持つ仲間です。
人は人生の時期やその時の状態によって、Calc.だった人が、Sulph.になったり、Lyc.になったりしがちであるということです。
私達を取り巻く自然界は、互いに多様な関係性を持ちながら存在しています。
また、私たち人間も、人間同士、さまざまに関係性をもって生きています。
それと同じように、レメディ達も、レメディ同士が、多様な関係性をもって存在しています。
そして、関係性にも、相性が良いだけでなく、避けるべき関係性や、打ち消してしまう関係性のものなど、さまざまあります。
深く知れば知るほど、深い恩恵をもたらしてくれるホメオパシーの世界。
最もよく使われている、有名なレメディからのスタートでしたが、これからの学びの道への期待をふくらませていただきたいなと、切なる願いを持ちました。