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Brother Sun, Sister Moon

駄小説のたまり場。

セミ・ノンフィクションの子供達。

雪がまた降った。
天気予報は、この雪が明け方まで降り続けることを告げている。


窓を開け、降りしきる雪を眺めていると、背後から声がした。

「雪、つもるね」彼女の声だ。

「ああ。また明日仕事が増える」明日はまた、実家の雪かきをしなくてはならない。

「この前みたいに、転ばないようにね」からかうように小首を傾げて彼女が笑う。笑い事じゃない。結構、辛かったんだぞ。

ねぇ、覚えてる?と彼女。「昔、大雪降ったとき、雪だるま作ったよね」高校2年のとき、春先の大雪が降った。部活帰りのワタシたちは、誰もいない校庭でふたりきり、雪だるまを作った。

「あのときは、寒かった」
「でも、あなた汗かいてたっけ」

そう。あのあと見事に風邪をひいたんだ。

「あ、この曲好きだったな。ライブでも必ず演ってたよね」
i-tuneから流れる、エリック・クラプトンの『Wonderful Tonight』。

当時、ワタシと彼女は同じバンドのメンバーだった。それがきっかけで、ワタシと彼女は付き合い始めた。この曲は我々の定番ナンバーで、ライブのプレイリストに必ず載っていたのだ。

目を閉じ、ギターの旋律に聴き入りながら、なつかしいな、と彼女がつぶやく。

「俺も久しぶりに聴くんだ、この曲」
「だから呼ばれたのかな?ここに」そう言い、彼女が微笑む。

そうかもしれない。降りしきる雪を見ていて、急に聴きたくなったんだ。


しばらくの間、クラプトンの歌声を聴きながら、ふたり並んで、しんしんと降り続く雪を見ていた。


「ねえ、雪だるま作ろうか?」

彼女の唐突さは、昔から変わらない。あのときも、彼女は同じことを言ったのだ。そしてワタシは、風邪をひいた。

寒いからイヤだ、そう言いかけたときには、もう彼女は階下の雪のなかにいた。

まったく。便利なもんだな。

「はやくおいでよ」
「やめろよ、風邪ひくぞ」つい口にしたあとで、思わず苦笑した。彼女が風邪をひくわけがない。寒さも感じないし、雪だって掴めない。

「もう、つまんない」彼女は少しふくれてみせる。

いつのまにか戻ってきた彼女がつぶやく。
「なんで私、死んじゃったのかな?」
「雪だるま、また作りたいな」

「ああ」寂しそうな表情の彼女に、ワタシは言った。


「明日、お前のために、作ってやるよ」


「ほんと?約束ね。自分で作れないのが少し残念だけど」
「うん。約束する」この程度の積雪では、小さいのしかできないだろう。

「じゃあ、明日楽しみにしてるね」にっこり笑った亡霊は、消えていった。



i-tuneの曲目は、ジェフ・ベックの『哀しみの恋人達』に変わっている。


「やれやれ。明日の仕事が、ひとつ増えちまった」
そうつぶやきながら、外を見る。


いつしか、雪はやんでいた。