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Brother Sun, Sister Moon

駄小説のたまり場。

セミ・ノンフィクションの子供達。

しばらく『旅行』に行ってない。
出張なら、たまに話は来るけれど、純粋な『旅行』は、もう3年位していない。

温泉いきたいなあ。

以前、ワタシが常宿にしている旅館があった。
そこは千葉県のとある海沿いの街にある。

この街は特に何の見所も無いトコロだけど、その分、観光地化されてない純朴さが気に入っていた。

この旅館に泊まるとき、ワタシは必ず「離れ」を予約していた。この離れが取れない時には、この旅館には行かなかった。

「離れ」は2室しかなく、なかなか予約が取れないのだけど(しかも特別室扱いなので、宿泊料も高め)、聞くところによると、昔「郭」として使われていた建物で、海に繋がる川に面している欄干は朱に塗られ、とても風情のある建物だった。

この部屋に来ると、何故か気持ちが落ち着く。部屋に入るとすぐ、この欄干のある縁側に腰掛けて、日が暮れるまで川を眺めるのがいつもの常だった。


ある年、この旅館が全面改装した。離れには手を加えられなかったが、母屋は近代的な「ホテル様式」にリニューアルされた。

それに伴い、家族連れのお客さんが増えた。
TVの旅行番組にも時々紹介されるようになった。
宿の宿泊料が値上げされ、料理の質がやや落ちた。

ワタシはこの宿を使わなくなった。

旅館だって商売だ。沢山のお客さんを呼びながら、より多くの利益を出さなくちゃならない。
そして、それに伴いホスピタリティも低下する。

かつて「離れ」の宿泊客は、その特権として部屋食ができた(何たって「離れ」なんだから、それが当然だ)。しかし改装後の予約時に、母屋泊まりのお客さんと一緒に、館内の食堂で食事をとることを要求された。「意味がない」ワタシはそう思った。だからそれ以降はこの旅館には行っていない。

仕方ない、とは思う。人気が出ればサービスの量が増え、限られた人員の中では効率的な方法を取らざるを得ない。でも、気持ちだけは忘れて欲しくない、と思う。その宿、その部屋を利用したいという、客側の気持ち。

時々、あの朱塗りの欄干を思い出す。
食事の手を止め、波の音を聞きながら酒杯を傾けたあの欄干。

また、離れのある宿探さなきゃ。

旅行、行きたいなあ。