【歌舞伎座の三谷】
25日に上京した。小雨の中、歌舞伎である。演目は「歌舞伎絶対族魂」、三谷幸喜作、演出である。
【饒舌な上演】
難点は、演者がしゃべり過ぎ、動きすぎることである。何を言っているか聴き取れず、視線を左右されて舞台全体への目配りが損なわれる。主役の幸四郎は特に甚だしい。しかし、それが三谷流の舞台なのだろう。客は慣れているのか、当意即妙に反応していた。
【宝塚のような】
良いところは、役者がそれを楽しんでいて、その気分が観客にまで伝染するところである。最後には大手拍子となり、フィナーレにかけて大いに盛り上がった。観たことないが、宝塚ってあんな感じなのかもしれない。歌舞伎座では珍な現象といっていい。
【溶け込んでいた役者】
役者では、幸四郎、弥十郎、鴈治郎も良かったが、何といっても浅野和之である。舞台上においてそれとなく、役者の個々の演技の媒介となるだけでなく、虚構を忘れさせるリアリズムを注入している。すごい役者なのだなあと感心した。
【フジの繰り言】
26日は千龝楽である。同日のTV連ドラ「楽屋はどこに」に関して三谷は、作者の楽しみための企画であり、視聴者は二の次なのだから視聴率が低くてもやむを得ないという趣旨の開き直りをしていた。その点「絶対続魂」は、その双方の意図を満たしたようで、慶賀のいたりである。両立できるんならそうしてよ、とフジはぼやいているに違いない。
【亀蔵に合唱】
最後に、移動の前に亀三の不幸を知った。猿之助の事件に似た怪しさを感じるが、そこまで詮索されることなく収まっていくのだろう。歌舞伎座3回廊下に写真が掲示されることもなく、いつの間にか忘れられる。あのすごみとおかしさのある演技が好きだっただけに残念である。
亀三には、みんなが彼を悼みつつ、それでも「絶対続魂」の板の上で唄っていた、と報告しておきたい。